▼ 05
一歩外へ出るとよく分かるその声のデカさに相変わらずだと苦笑する。後ろを見ると一人で出てきたつもりがゾロゾロとまさかの全員来てしまったことに、面倒な事になりそうと思ったことは内緒だ。
未だ言い争いしている中、四人の内の一人が私の存在に気づいた。彼の性格上すぐに飛び込んで来るかと思いきや、きょどきょどと戸惑っている。
その可愛らしい仕草に私は小さく笑い、両腕を広げた。
『おいで』
「っ、…李卯…!」
彼は目をうるりとさせるとすぐに私の名前を呼びながら腕の中へ入ってきた。そしてぎゅうぎゅうと少しの隙間も許さないとでも言うみたいに私の体を締め付ける。
痛いくらいのそれに注意しようと口を開いたが、その抱きしめている腕が微かに震えていることに気づき、結局浅い息を吐くだけで終わってしまった。
「あっ!ちょっと白虎(びゃっこ)!一人だけズルいわよ!李卯様から離れなさいよ〜!」
「そーだそーだ!ちょっとは俺らに譲れよなあ!」
「お前ら少しは口を慎め。ここは小福殿のお社、そしてそれ以前に主の前だぞ。…白虎、李卯様から離れろ」
「…いやだ」
上から朱雀(すざく)、玄武(げんぶ)、青竜(せいりゅう)の責めるような言葉に白虎は一言で断る。また始まった、と陽弥は呆れたように腕を組んだ。
「あのねぇ、李卯様も迷惑してるのよそれ!ほら、さっさと離れなさい!」
「……李卯、おれ、李卯ともうちょっとこうしてたい……だめ?」
『(うっ………)』
朱雀のキツい言い方に白虎はさっきより一層目を潤ませ、こてりと首を傾げながら聞いてくる。
勿論これは彼の戦略なのだが、如何せん私のタイプにぴったりハマってるのだ。どうして無碍(むげ)に出来ようか。
『…そんなに迷惑じゃないから、大丈夫だよ…朱雀』
「もうっ、お優しいんですから!」
「へへっ、やったっ」
ごろごろと甘えたようにすり寄ってくる白虎の髪をさらりと撫でる。するともっともっとと頭を寄せてくるので、期待に応えるように撫で続けた。
「……李卯」
『え、あ………忘れてた』
「忘れてた、じゃねーだろ!まさかそいつらは…、」
「おいおい、そいつらって言い方はねーだろ?オレたちはなあ、あの四神だぞ!」
「そのような言い方もよせ、玄武。馬鹿っぽく聞こえる」
「そうよ、品を下げないでくれる?」
「なんっなんだよお前ら!」
話の進まない三人に、聞こえる程度にパンパンと手を鳴らした。白虎もそれを合図にソッと私から離れる。
『はい…、まずは久しぶり。―――青竜』
「はっ、ご無事で何よりです」
『―――朱雀』
「はい、お変わりなくて良かったですわ」
『―――白虎』
「ん、会いたかった」
『―――玄武』
「はいっ、この日を待ってました!」
それぞれの名前を呼ぶと、それぞれの想いが返ってくる。ふ、と誰にも気づかれない程度に笑うと、今度は夜トたちに向き直った。
『ごめんね、放置してて』
「いいようっ、それよりそれより、この子たちって…」
『うん、四神だよ。右から青竜、朱雀、白虎、玄武。仲良くしてねっ』
くるりと青竜たちの方を見て挨拶を促すと、誰もする気がない中やはりと言うべきか彼が一歩前へと出た。
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