▼ 07
天(うえ)に着くとそこは戦場のようだった。
砂煙が充満して視界が悪い中、私は必死に夜トの姿を探す。
「李卯、あそこに夜トと毘沙門天がいるぞ!」
『ッ……遅かったか…陽器(ようき)!!』
パシッと陽器を握り、私は駆け出した。まずい、非常にまずい。
兆麻と壱岐さんはあの陸巴と藍巴に捕まった。きっと二人ともここの何処かに居るはずなんだけど、あの様子からすると毘沙門はその事を知らないようだ。
「さっさと兆麻と半妖を見つけねえと、マジで彼奴…禍津神になっちまうぞ」
『…うん、』
今の暴走している夜トを止めれるのは壱岐さんだけだ。どうして私じゃないの?なんて思いは捨ててしまえ。
邪な感情を斬るように陽器を振り上げた。
「…李卯、まずは李卯が禍津神の所へ行け」
『はあ?何言ってんの陽弥。私が行っても意味ないでしょ』
「毘沙門天は李卯の親友、とまではいかなくても友達、んで禍津神は李卯の大事な奴。行かねえ理由のがねぇだろーが」
『けど、「だぁああもう!! ウジウジすんじゃねえよ!! 俺の知ってる李卯はもっと堂々としてた!! これ以上自分を卑下に扱ったりすんじゃねぇ!! 分かったか!!」
ブンブンと勝手に陽弥が動く。乱雑な物言いは全部陽弥の本心だ。
……私はバカか。神器にこんな事言わせて、それって主としてどうなの?
『…ごめん、陽弥』
「分かりゃあいい」
『……あの二人の間に入り込む。陽器イケる?』
「あ?俺を誰だと思ってやがる……李卯の神器だぜ?」
『ふふ、頼もしいこって……じゃ、』
―――行くよ
踏み出した足は、もう戸惑わない。
走って走って走って、夜トが雪器を、毘沙門が数器と呼ばれ銃で今まさに攻撃しようとした時だった。
『クッ……まに、あえ…!!』
そして二人が各々の引き金を引いた瞬間、私は二人の間に体を滑り込ませて黒刀で二人の武器を防いだ。
間に合った事にホッと息を吐く私に対して二人は目を見開いている。
「おま…李卯…!?」
「何故李卯がここにいる!? 危ないからさっさと帰れ!! これは私と夜トの問題だ!!」
「それに李卯は他所の争いに入ってこなかったんだろうが!とっとと社に帰れ!」
『――…いや』
俯く私の表情は二人には見えていないだろう。けど何時もより低い私の声に驚いたらしく、二人はそれぞれ神器を引いた。
『確かに、確かに私には関係ないけど、でも……でも!
大切な二人が傷つくのを黙って見てれる訳がないでしょ!?』
バッと顔を上げて二人の顔を見ると案の定目を丸くして驚いてた。するといきなり悲鳴が聞こえて来たのに私たちはその方向を見据えた。
『…私が行く、解決は二人でしてね。
二人とも死んだら怒るから』
最後まで二人の顔も見ずに屋敷の方へ足を進めた。何だろう、嫌な予感がする。
そんな気持ちに比例するように陽器を握る手を強めた。
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