「ここで待ってな」
沖田さんと屯所に戻った私は、朝稽古に参加している近藤さんと土方さんを呼びに行った。
あんなに入るのを躊躇っていたのに沖田さんとならすんなり足を踏み入れられたのが不思議である。
久しぶりに戻ってきた屯所は少し綺麗になっている気がする。
「なるちゃん!」
「近藤...じゃなくて、ゴリラさん!」
「ねぇ!?2ヶ月ぶりなのにそのボケするの!?感動な再会だよね!?」
「ゴリラっぷりが変わらないようでなによりです」
「え?スルー?」
久しぶりにあった近藤さんは相変わらずゴリラだ。
「...普通なら切腹モンだぞ」
「トッシー」
「いや、トッシーじゃねぇから」
私にとっては1週間だけど、この人たちにとっては2ヶ月。長いようで短い。2ヶ月しかたってなくて良かったなって本当に思う。
私は道場前から近藤さんの部屋に入り、居なくなった経由を事細かく沖田さん始め3人に話す。
「元の世界に戻ったのになるちゃんはなんで戻ってきたんだ?あっちには親御さんもいるだろうに」
あぁそうだよね、私の元いた世界には両親も現在だし、大切な幼馴染みもいる。けど、こちらの世界を選び戻ってきた私。
「私、お父さんと2年も渡って盛大な親子喧嘩してたんです。ちゃんと仲直りしてきました」
「いや、仲直りしてきたなら尚更...」
「私は...自分の家系や親族が大嫌いでした。それから逃れられたけど、きっと私がいるだけで迷惑かかると思うんですよね、これから私の家族がすることに...。あと、私17年間私をここまで育てたくれた家族同様、真選組のみんなが大好きです。危ない目にも沢山あったけど、それでもここが好きです。万事屋のみんなも大好きだし...。私は、ここの世界で生きたいって思ったんです」
そう...大好きなお母さん、おじいちゃん、美咲まで捨ててでもこの世界で生きたいって思えた。ここの人達が私を変えてくれた。
「...潮崎、本当にいいのか?」
「後悔はしてません。だから、近藤さん、土方さん、沖田さん。私をどうか後悔させないでください」
その言葉にあきらかに驚いた表情をする3人。そして、仲がいいのか、同時に笑い出す。
「いい覚悟だ、なるちゃん!改めて真選組に戻ってきてくれてありがとう!そしておかえり!」
「...ただいまです!」
ここの人達は本当に優しい。私が何も言わず出ていってもその事を咎めることはしなかった。紅桜のときとは大違いだ。
ここの人達を絶対に守りたい。
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その日の夜、私が戻ってきたことを祝して宴会が開かれた。隊士のみんなが口々に「おかえり」と言ってくれるので私の心はずっとふわふわしていた。
「なる飲んでるか?」
「げ...」
「げってなんでィ」
沖田さんお酒に強いけど、酔い始めるとめんどくさいだよね。てか、酔っ払ってないのに酔ったフリするから余計にめんどくさい!ここに初めて来た時の宴会でもそうだったけど...!
沖田さんはお酒が入ったグラスを片手に私に絡んでくる。グラスを持っていない腕で私の腰を自分の方へ引き寄せる。
近いんだけど!
にしてもお酒臭い。お酒の匂いで酔いそう...
「お酒臭い!沖田さん!」
「んな、飲んでねぇよ」
本当に顔近いんだけど...
「ハッハ!総悟はなるちゃんが帰ってきて嬉しいんだよな!!」
「ゴリラ黙れ!」
近藤さん、ホント茶化さないで欲しい
「なる...」
「いい加減に...ン!」
え?え!?
「...ふ、..っ、ん」
待って待って!みんな見てる!え?なんでこのドSみんながいる前でキスしてんの?それもなんで舌入れてきてんの!?
「そ、そ、総悟ォォォ!?」
近藤さんと土方さんが私の沖田さんを引き剥がす。
ってか沖田さん、キスする度に舌すぐ入れてくるのどうにかなりませんか!?私、沖田さんが初めてだからどう対応すればいいのか、本当にわからないんだけど!
「つーことで、俺となる付き合ってまさァ...。こいつに手ェ出した奴は俺が殺す」
「え!?えぇぇええぇえ!?」
たかが町人B、平凡なちんちくりんのために隊士みんなの前で牽制するためキスしたんか!こいつ!というか、殺気凄いんだけど...
少女漫画とかでよく見かける光景...まさか自分がそのヒロインの立場になるとは...というかキスしなくても普通に付き合ってるだけでよくね?
「そういうことでさァ...」
驚くみんなを他所に私をみる沖田さん。その表情はあきらかにしてやったりの顔をしていた。
このドS、面白がってるだけじゃん
私の居場所
(沖田さん人前でキスはやめてください!)(お前のその表情みるのがいいんでィ)(くそドS!)