5.過去からの脱却
影山と日向は今日から朝5時から練習するみたい。私はそんな根性無くて、土曜日の試合の時に初めて参加することにした。
それに対して影山は何も言わなかったし、成り行きでマネージャーすることになるだろう私に日向は文句言わず「じゃ!土曜日にね!」って言ってくれた。ま、最初は不満そうな顔をしていたけど、影山の圧力に屈した感じなんだけどね。
そういえば、相手の1年生がどんな相手なのか私は全く知らないし、むしろ日向の実力も知らない。
ちょっと少し憂鬱というか仲間外れにされた気分。自分から練習には行かないって言ったくせに。
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そして運命の土曜日
「おはようございます...」
恐る恐る私は体育館に足を踏み入れた。
「おお、来たか!」
「えっと...」
「そういえば言ってなかったな、主将の澤村大地だ。よろしくな」
「俺は菅原」
初めてここに来た時色々ありすぎて先輩方の名前を聞いていなかった。
私はよろしくお願いしますと頭を下げた。
大地さんはその後影山たち以外の1年生を紹介してくれた。菅原さんとか他の先輩方が大地と言っていたのでついつい大地さんと呼んでしまってたが、大地さんは気にするなって言ってくれた。カッコイイ。
メガネが月島、そばかす君が山口。
「榎崎は試合見るの初めて?」
「1回だけ中学の試合見たことあります」
「そっかー、きっとこれからのことを考えると俺は楽しみだよ」
菅原さんは少し寂しそうに笑ってコートに視線を戻した。
ピッー!
試合が始まる合図。
月島が試合が始まる前に影山たちを挑発していたらしく、田中さんが凄い闘志を燃やしてる気がする。
いや、絶対そう。だって1点とっただけなのにシャツ脱いでるもん。
真剣に試合を見ようと私はコートに視線を向けたら、日向が予想以上のジャンプをしてスパイクを打った。
そのボールはブロックされてしまったけど、日向のジャンプ力に鳥肌がたってしまった。
「すごい...」
でもその後、日向のスパイクは月島のブロックに何度も阻まれた。
そんな中、月島が影山に必要以上に絡んでいることに日向が突っかかった。それに対して、月島が挑発するような雰囲気で中学3年のときの影山の最後の試合のことを語りだした。
これって、及川さんとはじめちゃんが言ってたことだ。
私も影山が”コート上の王様”と呼ばれていたのは知っていたけど、こういう理由だったのね。
「.....ああそうだ、トスをあげた先に誰も居ないっつうのは心底怖ぇよ」
「.....」
「えっでもそれ中学のハナシでしょ?俺にはちゃんとトスが上がるから別に関係ない」
「...わ、真っ直ぐ...」
プレー再開。
影山はどっちにあげるんだろ
「影山!!!」
日向の声が体育館に響く。
「え!?」
突然の助走.....今までにないスピード
「居るぞ!!!」
思わず唾を飲み込んだ。
咄嗟のことなのに影山のトスは日向に...
決まる!って思ったのに、スイングとトスのタイミングがズレて微かに手に当たって、相手コートに落ちた。
でも...今の...ボールを確実に叩けていたら...
「...スパイカーの前の壁を切り開く...その為のセッターだ」
過去からの脱却
(バレーって面白いのかも...)