52.難しい依頼の解決方法は単純
真選組隊内の抗争事件から1週間ほど経ったある日、私は万事屋へ来ていた。


「どうぞ」

「ありがとう」


新八くんが出してくれたお茶を飲みながら私はなんて切り出そうか迷っていた。


「で、なるちゃんの依頼ってなに?今更やっぱなかったことで!とか無しな。あと沖田くんと付き合いたいとかも無し!」


話を振ってきたのは銀ちゃん。


「いや、誰も沖田さんのこと好きとか言ってないし、付き合いたいとか言ってないじゃん。ふざけるのも頭の天パだけにしとけよ」


マジでこの天パ何言ってんだ。
いや、好きって認めたけど、今は付き合いたいとかないし、いや元々付き合っていけない存在だわ。


「···沖田さんは本当に関係ないからね。あと今から言うことは本当だし、ちょっと長くなるけど、聞いて欲しい」


私は、意を決してここの世界の住人じゃないことを素直に3人に話す。学校からの帰り道、田んぼに落ちて気づいたら屯所の前にいて、土方さんに見つかり、近藤さんのご厚意にて住み込み女中になったことを···。あと、真選組のみんなには伝えていない、この世界が漫画の世界であることも···。


「そりゃ本当なのか?」

「うん、全て本当。全部調べてもらったよ。私の戸籍なんてこの世界にはない。帰る場所もない。だから私が元の世界に戻るまで家族になってくれた。居心地がよくて帰ることさえ忘れてたりもしたけど」

「漫画の世界ってことはなるは話の流れ分かってたアルか?この間のも」

「ううん、私は万事屋さんが活躍する漫画読んでなかったから全く知らなかったよ。あ、でもなんか銀ちゃん人気らしいよ、ありえないよね」

「それはありえないアル」

「いや、大いに有り得るだろ。だって銀さんカッコイイ!!」


人気ってこと言わなければよかった。調子乗ってるもん。


「でもなるさんはどうやって元の世界に戻るんですか?」

「あーそれを万事屋さんに探して欲しくて···」

「はぁ!?」


銀ちゃんが机を叩いて驚く。
いや、そうだよね。普通の反応だよね。私だってそんな事言われたらはぁ!?ってなるわ···。


「難しいと思うけどお願いします」

「けど、なんで今更元の世界に戻りてぇんだ?今までそんな素振り出したことあるか?」

「この前のみんなを、伊東さんを見て思ったの···。いつまでも逃げちゃいけないって、解決しないといけないことがあるの···」


そんな中、ずっと黙っていた神楽が口を開く。


「やらなきゃいけないことが解決したら、なるは帰ってくるアルか?」

「·····」


私の世界はここじゃない。いつかは戻らないと行けなかったのだ。だからこの質問がくるとは思っていなかった。


「神楽ァ、なるちゃんは元の世界に帰るんだ。わがまま言ってんじゃねぇよ。ちゃんと家族が待ってんだ」

「なるさん···」

「危ない目にたくさんあったけど、ここの世界の人達にはたくさん元気貰ったよ。神楽もありがとう。でも今はただ元の世界に戻りたいってだけなんだ。私はここの世界の住人じゃない、イレギュラーの存在。みんなにはもし私が帰ったら私のこと忘れて欲しいな。私は忘れないけどね」


結局、私は決心がついていないのだ。


ここの世界に居すぎたせいなのか、元の世界に戻るのが怖いだけなのか、どっちの世界で生きていたいっていう覚悟がない。どっちつかずだ。


私がこの世界からいなくなったらなら、みんなには私のことを忘れて生活して欲しいのは本音である。



「そりゃ、我儘な願いだな」

「うん、知ってる」

「なるが決めたことなら仕方ないアル···。でもこれだけは約束して欲しいアル。元の世界に戻るまで私とたくさん遊んで欲しいアル!」

「うん、喜んで!」


神楽が納得してくれるか心配だったけど、受け入れてくれてありがとう。


「ここに来た時、本当になんもなかったのか?」

「うん。クレープ食べながら自転車漕いでたら田んぼに落ちた、それだけ。あ、あと、そうあの日、私が家に帰った日は、夕方。たまに青空と橙が混じっている綺麗な空だったな」


私は沖田さんが買ってくれた簪の飾りを見せながら銀ちゃん達にいう。


「難しい依頼内容だけど、受けてくれますか?前払いとして1ヶ月の給料全て払うし、依頼完了ひたら3ヶ月分の給料渡すよ」

「···よし!乗った!」


いや、切り替え早っ!お金の存在チラつかせたら死んだ目が一気にやる気になったよ。ホント現金主義すぎる。



「あと、このことは真選組のみんなには内緒でお願いします」

「おい、そりゃ···」

「銀ちゃんが思ってる通りだよ」


私は、テーブルに万事屋に来る前に卸してきた依頼料が入った封筒とケーキを置き万事屋から出ていった。


いざ帰るって言ったけど、寂しいなぁ···。






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万事屋に依頼してから、私は2日に1回、万事屋を訪れていた。


「銀ちゃん見つかった?」

「見つかるわけねぇーだろ」

「色んな人に聞いてますけど、異世界から人が来るって中々っていうか現実見ないですよね」

「目の前にその異世界人いるんですけど」


なかなか見つからないよねー


「ショック療法的なのどうアルか?」

「え?」

「だから、ここら辺の田んぼになるが落ちてみるアル。そしたら帰れるかも」

「そんな単純な?」


たしかにいい案かもしれない。


「よし、早速明日やってみるか」

「早っ」

「思い立ったら即行動ってな」


神楽のショック療法的な方法で本当に元の世界に戻れるか分からないけど、やってみるのはありだよね。なかなか帰れなくて何回も田んぼに落ちるのは御免こうむるけど。


「じゃあ明日またくるね」


私は万事屋から足取り軽くでていった。そういえば最近あの空だな···。本当に明日戻れたらどうしよ。お母さんもおじいちゃんも覚えているかな···。あと私の居場所あるかな?


ま、戻った時に考えよ






難しい依頼の解決方法は単純
(問題は真選組···)

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