51.真選組動乱篇6
伊東さんは、自分が死んでいくことが分かっているのか、1人で死んでいくのは怖いと私たちに告げた。


絆···



信頼···


伊東さんが欲しかったモノがあるかないかで死ぬ時の想いが違うのかな。


ミツバさんが死ぬ時、ミツバさんの傍には沖田さんがいた。真選組のみんながいた。あの時のミツバさんは安らかに息を引き取ったように見えた。沖田さんとの信頼や絆があったからなのか。



「そいつをこちらに渡してもらえる」


攘夷浪士たいを検挙し終えたのだろう。
原田さんたちが伊東さんを迎えにきた。新八くんが、死にそうな伊東さんを思ってか連れて行かないでほしいと懇願するが、その思いは真選組のトップである、局長近藤さんの一言によって、破られた。



「近藤さん!!なんで!!近藤さんどうして···」


納得がいかない新八くんは近藤さんに詰め寄るが、近藤さんが静かに流す涙に口を閉ざした。


私はみんなについて行くことはせず、神楽と新八くんと一緒に、先程までいた車輌を出る。



「···そうさ、ほっといたって奴ァもう死ぬ。だからこそ、だからこそ斬らなきゃならねェ」

「銀ちゃん···」


外に出ると伊東さんを囲む真選組隊士の姿があった。その円の中には伊東さんの他に、土方さんが立っていた。


土方さんは伊東さんに刀を投げ、立つように言う。



「真選組は...伊東を薄汚ねェ裏切り者のまんま···死なせたくねーんだよ。最後は···武士として···仲間として伊東を死なせてやりてーんだよ」


あ、見誤った···。


史実は、裏切り者として伊東さんらは暗殺された。でも今目の前で行われているのは、仲間としてのケジメ···。


裏切り者と仲間···響きも意味も全く違う。



土方さんの一筋が伊東さんを捕らえる。


伊東さんは最後に、涙を流し「ありがとう」と一言言い、地面に倒れた。



あぁ、違うよ伊東さん。やっぱり私とあなたは違う。ちゃんと初めからあなたにも心から通じる仲間がいたのに、それに気づかなかっただけ···。


そして伊東さん···直接言えなくてごめんなさい。そしてありがとうございます。あなたのおかげで私も決心がついた。



「これでよかったんですね」

「あぁ···。あいつらはそれを望んだ。依頼完了だ」


外が明るみ始めた頃、真選組を真っ二つにした抗争は幕を閉じた。


「なるちゃんもあいつらのとこ戻んな」

「ううん、行けない···」

「なる?」

「まだ行けない···」

「なるさん?」


なかなか真選組の元へ戻らない私を不信がって、神楽や新八くんが私の顔を覗き込む。


「銀ちゃん···」

「んだよ」

「私と銀ちゃんが名前教えあった時、私に言ったこと覚えてる?」

「···」


銀ちゃんと土方さんが決闘したあの日に言われた言葉。


”困ってんなら銀ちゃんに相談しろよ”



「万事屋さん···今度は私の依頼···頼まれてくれますか?」



太陽が顔を出した瞬間、私は万事屋に依頼を頼むことにした。


”私を元の世界へ戻して欲し”


と···。



無茶難題な依頼だということは重々承知している。でも···いつまでも逃げてられないし、突然こっちの世界にきたから元の世界がどうなっているか気になるのだ。


気にしないようにしていただけで、私は無意識に嫌なことから逃げていただけ。


でも剣に生きる人たちの傍にいると、想いや信念···色々な思いを感じるわけで、私も信念を持ちたいとも思ったりした···。
うまくはいえないけど、私もちゃんとケジメをつけないといけないなって···。



「依頼料、高ぇけど?」

「うん、大丈夫!」


そう、きっと大丈夫。







夜明けの少女の決意
(改めて万事屋にいくね)(あぁ···)

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