はっかったっの塩!
『ダーリンっ』 『ダーリン!』 『ダァーリーン!!』
練習中、必ず10回は聞くその言葉。
『…名前ちゃん、あのさ、』 『いいの、大丈夫』
11回目が聞こえる前に、私は少しそこから離れるの。
『アキ、確かお塩が無くなったって言ってたわよね、』 『え?えぇ、』 『私、今から行ってくるね』 『あ、名前ちゃん!一人で大丈夫?』 『スーパー近いし、大丈夫』 『じゃ、お願いするね』 『うん』
もうすぐ練習も終わるし、今から行けば夕食の用意に間に合うだろう。
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『あれ、名前さん?』 『うん?』
スーパーへの道を歩いていると、向かい側から見知った男の子がやってきた。 知らぬこの土地で出会うのは、やっぱりサッカー関係の人で。
『君は確か、立向居君?』 『は、はい!こ、光栄です!名前を覚えていただいてるなんて!!』
ぴしっと背筋を伸ばす彼は、この土地で出会ったサッカー少年。 "ゴッドハンド"を使えちゃう凄い子。 そして凄く礼儀正しい良い子だ。
『ランニング?』 『はいっ!』
爽やかにキラキラ輝いた笑顔を見せる彼に思わず顔が綻ぶ。 努力、してるんだな…。 と、私が和んでいると、立向居君は名前さんはなにをしてるんですかと首を傾げた。 私がスーパーまでおつかいと蝦蟇口財布を見せたら彼はじゃあ案内しますと私の手を取って。
『あ、でも、』 『あのスーパーより、こっちの方がいいですよ!』 『ランニングは?』 『とりあえず走り終えたので大丈夫です!』
にっこり。 笑う立向居君に、遠慮がちに手…と言うと気づいたらしい彼は慌てて離して。
『あ、あ、すみませんっ!』
真っ赤になって俯いた。 新鮮な反応…。
(可愛いなぁ…。)
* * * * * * * *
『こ、これが幻の"伯方の塩"!』 『幻?』 『CM見て心鷲掴みされたの。あれ歌い方面白い』 『あは、名前さんって面白い人ですね』
あのインパクト大のCM…初めて見たとき、あの声が何度も頭の中に流れて離れなかったのよね。
立向居君が手伝ってくれるらしいから、少し他の買い物をして帰る。 少々重くなってしまったけれど、彼はひょいと軽々持って。
『大丈夫?』 『これくらい平気です!』
考えたらタイヤ背負って走ったり特訓してるんだった。 見かけによらず力付いてるんだなとなんだかビックリして。
『名前さん?』 『あ、ごめん何でもない』
帰ろうか、と元来た道を歩く。 荷物はほぼ、立向居君が持ってくれた。
昔を思い出すなぁ。 よく一哉と買い物行ったっけ。 お菓子何買うか喧嘩したりさ、 …なんて、たった数年前の出来事なんだけど。
今は酷く懐かしく感じる。
『名前さん?』 『え?』 『何かぼーっとしてましたけど…大丈夫ですか?』 『あ、ごめんね、大丈夫!』
昔を思い出して感傷に浸るなんて情けない。 立向居君は、眉根を寄せて凄く心配してくれてて。
だから。
『大丈夫!ねっ!』
精一杯、笑顔を作った。
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今さらなんですが、アメリカで過ごしてた感じを出す為に一ノ瀬や秋の名前はカタカナ表記にしてます。 でも名字の人は読みづらいので(書いてたんですが読みづらかったんです…)漢字にしています。 分かりづらくてすみません(つд`) ご理解よろしくお願いいたします。
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