episode:03






照明に驚いて、
トイレに驚いて、
蛇口に驚いて、
冷蔵庫に驚いて、
電気コンロに驚いて、
電子レンジに驚いて、
テレビに驚いた。(←今ここ)




『…』
『大丈夫ですか』
『…疲れた』



らしいです。








あの後私が作った夕飯のグラタン(混ぜるだけ簡単)をスプーンに戸惑いつつも美味しいと食べてくれて、私が片付けている間も落ち着かないのか部屋の中をウロウロしていた。

沖田さんからしたら不思議で仕方がないんだろうな…この世界は。


『名前殿、これは?』
『電気ポットです。お湯が沸いてるんです』
『湯が?』
『熱いですからきをつけて下さいね』

さっきからこんな感じ。
キラキラした目で眺めて、何で火も無いのに沸くんだと不思議そうに眺めていた。
その時、私のケータイが鳴ってビックリした沖田さんがビクリと肩を震わせる。
笑ってはいけないと、誤魔化すようにケータイを開けばディスプレイには「剣城京介」と表示されていた。


『剣城君?』
『剣城?』
『みたいです』

私の「みたいです」の意味が分からなかったらしい沖田さんは首を傾げた。
私が電話に出ると更に傾げた。


『もしもし、剣城君?』
「名字先生…遅くにすみません…」
『大丈夫よ、どうしたの?』

あの、と控え目に声を出そうとする剣城君の声を聞いていると、ずい、とケータイに耳を付けてきた沖田さん。
吃驚して離れると、沖田さんも吃驚したらしく目をぱちくりとさせ私を見ていた。


『な、何ですか沖田さん…』
『剣城の声がする…』
『え、ああ、そうです剣城君です』
『?』

理解出来ないのは分かるけど、ちょっと今のはびっくりした…。


『剣城君、ごめんね。沖田さんが心配なんでしょう?』
「は、はい…っ」
『今代わるわ』

沖田さんに渡して、こうやって、と耳に当てるジェスチャーする。
恐る恐る耳を当てた沖田さんは、何も聞こえないからか私を不安げに見た。
多分剣城君はこちらからの声を待っていて、何も発していないんだろう。

『沖田さん、何か話してください』
『な、何か?』
『剣城君です、話しかけて下さい』
『え?あ、えっと…つ、剣城…?』
「沖田さん…?」
『つ、剣城の声が聞こえる!』
『ちょっ、沖田さん声大きいです』

多分今、剣城君耳がキーンとなってるに違いない。
普通の声で話す様伝えると、戸惑いながらも話し出した沖田さんは何やら剣城君と会話していた。
分かった、とか何とか言って、苦笑いしながら私に戻す。

『もしもし?』
「名字先生、ありがとうございました」
『いいえ。沖田さん、体調も良いみたいだし…大丈夫よ』
「はい…」

心優しい剣城君の事だ。
きっとそれが心配だったに違いない。
なんだか私まで嬉しくなってありがとうと言うと、剣城君も嬉しそうにした。
話を終えて切ると、沖田さんはうずうずしていて、何ですか?と訊ねると苦笑いして。


『剣城に、名前殿に迷惑をかけないようにと言われた』
『あら、』
『すまない…』
『別に迷惑だなんて思ってないですよ、いきなりこんな時代に飛ばされたら誰だって不安ですし…』
『それも有るんだが…』
『?』

あの、とまた口ごもるから首を傾げると、ケータイを指さした沖田さんが。

『それは一体何だ?』

と、好奇心丸出しの顔で聞いてきた。
これは、と携帯電話の説明をする中で、ふんふんと感動した沖田さんを見ながら私は、このままお風呂に黙って突っ込んだらどうなるんだろう等と意地の悪いことを考えていた。


『…奇妙なものばかりだな…未来は』
『でしょうね…』

ですが安心してください。
戸惑うアナタを見ているだけで、私も楽しいですから。

なんて意地悪、言えない。





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私達だって200年近く経った未来に行ったらこうなるって。

とりあえずお風呂に突っ込んだら蛇口捻って上からシャワーで水がじゃぱーでうひゃおう!?ってなると予想←

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