episode:02











『すみません狭いですけど…適当に座ってて下さい』


と言う自分の言葉に、ソファの脇にキチンと正座で座る沖田さんを見て心底後悔した。







『わ、』

ソファに腰掛けた沖田さんは控えめに声を出した。
初めての感触を確かめるみたいに、何度か座り直している。
お茶を出して、どうですかと訪ねると微妙な感じで苦笑い。

『落ち着かないな』
『ですよねー』

残念ながらウチに和室は無い。
普通の2LDKマンションだ。

とりあえずシワにならないように着物をハンガーにかけて、少し寒いからエアコンをつける。

『沖田さんお身体の方は大丈夫ですか?』
『え?あぁ…』

そう言えば、と沖田さんは胸を押さえた。
異状が無いに越したことは無いけど、あんなに咳き込んでいて更に高熱まで出して寝込んでいたから…少し心配だな。
無理はしないで下さいねと言えば、沖田さんは改めて正座をして、頭を下げた。

『俺が今こうして居るのも、名字殿のくれた薬のお陰だ』
『え、いや…そんな私は…』
『聞けば薬代も受け取らずに帰られたと聞き…』

堅い堅い!堅いよ沖田さん!
何かすごい私が恐縮しちゃいますよ。
私は唯、市販薬をすり潰して渡しただけで…命の恩人みたく言われても!


『大した事してませんから!』

そう言って、気づいた。
そうだよね、沖田さん達の時代からしたら薬はとっても貴重で高いものだ。
(しかも効き目は抜群)
私からしたらなんでもない事でも、沖田さんからしたら女の私に頭を深く下げる程感謝する事なんだ。

『顔を上げてください、』
『名字殿、』
『そのお気持ちだけで…沖田さんが今そうやって元気なだけで私は十分です』

私が微笑えば、沖田さんも安心したように笑った。


『唯一、心残りだった』
『え?』
『感謝の気持ちを伝え、未来へと帰る時に見送りが出来なかったことが』
『沖田さん…』

話によると、あれから少し経っている様で体調が良い日を見て沖田さんは居ないと分かりつつも暫く私たちを捜していたらしい。
その日も町へと足を伸ばしていたら、どう言う訳か立ちくらみがして。
気が付いたらあの場所に居たのだそうだ。

それがエルドラドの仕業なのか、また別の勢力の仕業なのか分からないけれど…早く元の時代に帰してあげたい。


『帰れるまで、うちでゆっくりしてください』
『忝ない…』



もう一度頭を下げて、にこりと笑う沖田さんに少しドキドキして。
これが単なる好奇心なのかまた別の何かなのか分からないまま…この奇妙な同居生活がスタートしてしまったのである。





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沖田さんとの生活。


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