嶋野のお嬢 | ナノ

  初恋、一旦終了。




ホテルから出ると、前にはバッティングセンターがある。真島さんとよう行ったなぁ、なんて思ってたら、ちょうど真島さんが出てきた。腕を組んでホテルを出ていたので、お互い固まった。タイミングが悪すぎへん?

無言で近づいてきて、真顔やった。腕を引っ張られ、桐生さんと引き剥がされる。


「何してんねん、お前ら」

「ま、真島さん…」

「兄さん、レンが怖がってる」

「桐生チャンは黙っとれ。レン、桐生チャンとホテルで何してたんや?あそこどういうとこかわかってんのか」


腕を掴まれたまま、力を入れられる。ああ、怒ってる。なんで怒るんよ。私のことなんて、子どもにしか思ってへんくせに。いつまでも子どもちゃうねん。つい、睨み返した。すると真島さんも顔を近づかせて睨んできた。


「いや、やることなんか1つしかないやろ。真島さんこそ、そないに突っ込んできてなんなん?関係ないやん」

「はぁ?何アホなこと言うてんねん。家族やおもてるのに、そないなこと言いなや。…お前桐生チャンとやったんかいな」

「そうや、桐生さんが私を女にしてくれてん」


そういうと胸倉を掴まれる。周りの通行人も私たちを避けて歩いた。

こんなに怒られたことはなかった。桐生さんも制止の声をかけるけど真島さんには聞こえてないようで。掴んでくる手首を掴む。私の気持ちも知らんで、心配ばっかりして。気づいたら泣いてた。私が泣くなんて、真島さん関係のことや。真島さんの目の前で泣くんは、これで2回目や。泣く私に動揺する真島さんは目が揺れてた。なんでほっといてくれへんの。


「真島さんなんか、私の知らんところで恋して、付き合って、結婚して。私はずっと真島さんしか見てへんのに、全然見てくれへん。家族やいうて、女として見てくれへん。やから、桐生さんに頼んで女にして欲しかっただけやねん。真島さんは私の気持ちなんか、1つもわかってへん。ずっと好きやねん。ほんまに好きやから、女になって、少しでも後悔したらええねん思っただけや!ええ加減離せや、苦しいねん!」


何も言えへん真島さんの手を振り切る。涙を袖で拭き上げた。泣くんは悔しいから。桐生さんを巻き込んでしもて、申し訳ない。3人で佇んだ。


「桐生さん、ごめん。デートはまた今度してくれへん?我儘ばっかりでほんまにごめん。今日はありがとう」

「ああ。…素直に自分の気持ちぶつけろよ。兄さんもレンをよろしく頼むぞ」

「言われんでもわかっとるわ」


頭を撫でられ、その場から去った桐生さん。ええお兄さんやなぁ、ほんまに。残された2人やけど、黙って話さんかった。どないしたらええんやろ。素直になるってなんなん。


「すまんかったな、胸倉掴んでもうて。怖かったやろ」

「全然大丈夫やから」

「…なぁ、海行かんか、海!」

「何言うてるん、いきなりすぎやわ」

「海見たら気持ちがスッキリするおもてな。行こか」

「え、ええ!ほんまに行くん?」

「当たり前やろ、タクシーで東京湾まで行くで」


手を引っ張られ、あれよあれよの間に海の前に着いた。海風が当たって、独特な匂いがする。座って海を眺めていると、隣に真島さんも座り煙草を吸い始めた。日も暮れ始めて、辺りはオレンジ色に染まっている。こんなゆっくり海を見る機会ってなかったなぁ。隣の真島さんを見ると、やっぱりかっこよくて。なんで私の側にずっとおってくれへんのやろう。こんなにも好きやのに。


「俺はな、レンのことほんまに大事におもとる。お前が小っちゃい頃から見てきとるし、懐いてくれて嬉しいねん。大阪にも一緒にきてくれたことも俺の支えになっとった。家族みたいな存在やねん」

「うん…」

「やから、お前が傷つくんは嫌やし、守ってやりたいとも思う。妹がおったら、こんなんなんかと感じんねん」

「せやな、わかってんで。どんだけ、真島さんのこと見てきてるおもてんのよ。真島さんは奥さんを幸せにしてあげて。後、真島さんの事大好きすぎるから、幸せになってくれな困るなぁ」


するといきなり腕の中に包み込まれた。振られてんのに、心臓早なるんは許して。真島さんの奥さん、ごめん、今だけ真島さん貸してな。力強く抱きしめられる。


「ありがとうな、レン。でも今日みたいに好きでもない奴に体を委ねたあかん。自分大事にせんと勿体無いでぇ」

「桐生さんに頭下げて頼んでもうたわ。でも桐生さん、私のこと褒めてくれたわ。将来が怖いくらいエロいって」

「アホ、調子乗んな」

「いたっ!いいことやん、やっぱ私がモテるんって、そういうのが本能的に感じてまうんかなぁ」

「しょうもない男に引っかかんなや。彼氏できたら親父と俺に紹介せぇ」

「嫌やわ、いちいちチェックされなあかんの?」

「当たり前やろ!変な男やったら承知せえへん」

「真島さん」

「ん?」

「大好き、幸せになってね。困ったらまた頼ってくれてええよ?」

「…アホこっちの台詞や」


こうして、私の初恋は終わりを告げた。でもこれからも真島さんの事は好きでい続けることは、わかっていた。なかなかしぶとい女やわ、私って。



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