嶋野のお嬢 | ナノ

  唯一の友達



学校はあんまりおもろない。やって、友達龍司くんしかおらんもん。隣の男の子やって私のことびびってくるくせに、ちょっかいかけてきよる。

放課後1人、席で本読んでたらクラスメイトの男の子が構ってくる。転校生というのも相まって余計。ほんで、また更に男の子を盗られてるから、女の子たちの目線も痛い。なんでこんなガキばっかやねん、しょうもないわ。


「なぁ、嶋野お前1人ぼっちでださいで」

「なんやねん、別にださくてええやん。読書の邪魔すんなや」

「何の本読んでんねん?なんやこれ」

「なになに!え、法律の本〜?意味わからんやつ読んでて楽しいんかい」

「もうええからほっといてくれ。なんなん、そんな寄ってたかって。私の事そないに好きなん?」

「は、はぁ!?何いうてんねん。1人で寂しそうにしとるから、皆で構ってあげとるだけや」

「ほんまか。心配してくれてありがとうな。でも私ちゃんと勉強して、大人にならなあかんから、構わんでも大丈夫やで」

「っ、こんな本より、クラスに馴染むことの方が大事や!」


本を取り上げられ、黒板に向けて投げられた。本は黒板に当たって、音を立てて落ちた。プツンと切れる音がした。真島さんが、せっかく買うてくれた本やのに。私が欲しがって我慢してたら、内緒で買うて喜ばせてくれたのに。

気づけば投げた奴の胸倉掴んでた。


「ワレ、ええ加減にせえや。やってええことと悪いことの区別できひんのかいや」

「…っ!」

「そこまでにしとけや、レン」


教室の前から、唯一の友達である龍司くんの声が聞こえた。本を拾ってくれ、少しチョークで汚れたのを払ってくれていた。そして私たちの元へやってくる。龍司くんはこの小学校でごっつい有名な子。私と一緒でヤクザの子で、いつの間にか仲良くなってた。


「ありがとう、龍司くん。でもこいつ私の大事なもん投げたから、ケジメつけなあかんやろ。大事な人から買うてもろたもんやねん。まず謝れや」

「ご、ごめん…!そんなん知らんかってん」

「ええよ。素直でええ子や。胸倉掴んでごめんな。いつも話しかけてくれてありがとうな。たまに遊んでもらうことにするわ」


私より小さな男の子の頭を撫でる。周りは龍司くんと私にびびって、そこから動かない。やっと龍司くん来たから帰れるわ。龍司くんの腕を組む。嫌そうにするけど、ちょっと喜んでるん知ってるからな。


「皆騒がせてごめんな。また明日」



__________________________



「龍司くん、来てくれてありがとう」

「ええで。お前がまだ大人でよかったわ。今日はどないすんねん?」

「私んちおいでよ。一緒にご飯食べよ」

「え、ええんか!めっちゃ嬉しいわ。レンの飯うまいから好きやねん」

「ほんならスーパー寄ろうや。今日はオムライスでええ?」

「なんでも食うで。宿題もご飯食べた後やるからな」


蒼天堀の街を2人、手を組んで歩く。嫌がる龍司くんも、私が離さないのを知っているから諦める。龍司くんといる時はずっと笑顔な気がする。やって、落ち着くねんもん。気も遣わんし。

スーパーで買い物を済ませた後、アパートに戻る。真島さん、仕事頑張ってるんかなぁ。龍司くんも何回かきとるから慣れたもんや。靴を脱いで寛ぐ。

ランドセルを置いた後、エプロンをつけて夕食の用意をし始める。龍司くんも少しは手伝ってくれるから、嬉しい。ご飯を洗ってくれる。


「龍司くん、今日のお迎え何時に来るん?」

「んー9時くらいにしよか。電話借りるわな。お前もあんま1人でおりたないやろ」

「優しいなぁ。家のほうは大丈夫なん?」

「親父もレンのこと心配しとったで。佐川さんから聞いてるらしいからな」

「ええ、近江連合の色んな人に知られてんねんなぁ」

「自分の親もヤクザやし、そらそやろ。ご飯早炊きでええか」

「ん、ありがとうな。真島さん今日も遅いやろなぁ」

「マジマさん、言う奴も大変やな。まだ会うたことないし忙しいんやろ」

「めっちゃ頑張ってくれとるねん。ご飯炊けるまで待とか」


龍司くんは家に電話した後、テレビをつけ龍司くんと横に座って並ぶ。少し今日は疲れたなぁ。なんや、暖かいし、眠なってきたわ。すると龍司くんが寝転び出した。龍司くんも眠いんかな?宿題、今のうちにしといたほうがええのになぁ。布団を被せるとすやすやと寝出した。それ見てたら私もちょっと寝たくなってきた。横になり、同じ布団に入る。龍司くんが抱きついてきた、あかん意識飛ぶ…。

そのまま寝てもうた。



「おい、レン!起きんかい!」

「んー、もうちょっと…」

「可愛…ちゃうねん。ええ加減おきや!」

「なんや…騒がしいな」

「騒がしいなちゃうねん、お前誰や」

「ま、真島さん!」


目覚めると時計は午後8時を指していた。うわ、ご飯できてへん。やばい真島さんめっちゃ怒ってる。鬼の形相やわ。龍司くんは初めて見る真島さんに驚いてた。布団から起き上がった後動けなかった。

「とりあえず、2人とも布団から出て、正座せえ」

「は、はい」

「マジマさんですか。こんばんは。郷田龍司言うもんです」

「挨拶はできんねんな。このクソガキ」

「あ?クソガキやて?」

「龍司くん!やめて!真島さん、めっちゃ強いねん。やから、怒らんといて。何で真島さん怒ってるんか聞きたいから」

「チッ」

「ほんまにお前小6かいな。態度がなってへんわ」

「真島さん、おかえりなさい。ご飯作りながら話してええ?お腹すいてるやろし、すぐ作るから」

「ああ、かまへん。俺が怒ってる理由はただ1つや」


エプロンをつけて、3人分のオムライスを作る用意をする。はあ、龍司くん帰った後真島さん機嫌悪いやろなぁ。


「お前が家きてるん知っとるねん。前からレンから聞いとったからな。やけど一緒の布団でしかも抱きついて寝てるってなんやねん。お前と付き合うとるわけやないんやし、それはやったらあかんわ」

「それはすんまへん。いつの間にか寝とって、寝ぼけて抱きついてまいました」

「布団の中に入ったんは私やねん。真島さん怒らんといて。龍司くん、私が寂しないように毎日一緒におってくれるねん」

「それはほんまに助かっとる。その件に関しては礼を言うわ。でもレンに手を出したらただじゃすまんで。親父の大事な娘で俺が預かってんねん。それは頼むな?」

「はい、わかってます」


よかった、なんとか丸く収まりそう。真島さんは私のこと心配してくれてるから、怒ってるねん。有難いことや。オムライスも出来上がって、机の上に置く。お茶も入れて用意ができた。


「とりあえずご飯食べよ?いただきます」

「「いただきます」」

「うまい。ほんまレンの飯はうまいな」

「せやろ。龍司くん、わかっとるな」

「ありがとう、足りんかったら言うてな?2人とも」


2人ともご飯をガッと食べて、おかわりをしてくれた。これだけ食べてくれたら気持ちいいな。食べ終わった後、龍司くんが口を開いた。もうそろそろ迎えにくるんちゃうかなぁ。やけど大好きな2人が仲良くなってほしいし、黙っておこ。


「マジマさん、喧嘩強いんですか?」

「ん?ああ、他の奴等より倍以上強い思うで」

「へえ、わしのこともっと強くしてくれたりします?親父越したいんですわ」

「近江連合の会長をかいな。難しい話やけど、暇やったら相手したるわ」

「…!ありがたい話ですわ」


無事に仲良くなったみたいや。よかった一件落着や。


「あ、レン。龍司くん帰ったら覚えといてや」


あ、落着やないみたい。





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