幼い恋心
「朝ごはんできたで!起きてや」
「んん、レンちょうこっちきて」
「真島さん、相変わらず寝起き悪いなぁ」
真島さんと私は今大阪に住んでいる。理由があって、嶋野組の娘である私は我儘を言い大阪に飛ばされた真島さんに着いてきた。穴倉にいる時も、黙ってご飯をあげたり、隠れて真島さんを援護してた。やって、お世話になっとった真島さんが痛い目合ってるん見てられんかってん。
おとんには、極道としてケジメをつけとると怒られたものの、私は極道ちゃうからわからん。溜息吐かれながらも、お前は度胸ある娘やから、言うこと聞かんの知っとる。好きにしたらええ。でも大阪ではいらんことすなや。とお灸を据えられた。
小学生の私にそんなんできるかい、と。見張られてるん知ってるし、真島さんを連れ出す力もないん知ってる。今はここで真島さんと一緒にいるだけでええ。
布団に引っ張られて一緒に入る。温かくて落ち着く。ちゃうねん、このままやったらあかんねん。学校行かな!でもグランドで夜遅くまで仕事頑張ってるん知ってるしなぁ。いや、あかん!
「真島さん、起きよ。ご飯一緒食べるで」
「……せやな。ちょっとコーヒー入れてくれんか。ほんなら食べるわ」
「おはよう。顔も洗い!」
「…しっかりしとる子やなぁ、嶋野の親父の娘とは思えんわ」
暖かい布団から出て、コーヒーを机に置く。コーヒーが欲しいというと思っとったから、用意していてよかった。真島さんも布団から出て向かい合う。いただきます、と声にだして言うと続けて真島さんもいただきますと言った。
今日の夜は何を作ろ。なんて考えていたら、真島さんがじっと私をみていた。照れるなぁ。
「そない見てどないしたん?照れるわぁ」
「いや、レンはええ嫁さんなるおもてな。親父の子やのに美人やし、性格もええから学校でモテモテやろ」
「そやなぁ。騒がれることはあるで。でも佐川さんとおるとこ見られとるから、ヤクザの娘や、思われてるみたいや。やからあんま話しかけてこんけどな」
「え、ほな友だちおらんのか?」
「おるよ、一個上の男の子。その子、めっちゃ話し合うねん」
「男かいな。今度おれにも紹介してな。どんな男か見てみたいわ」
「真島さんとあんま身長変わらんくらいでかいで。ええ奴やし、今度家連れてくるわ!」
「めっちゃでかいやん。紹介とか、なんか娘とられた気分なってきたわ」
「ふふ、真島さんがいっちゃん好きやで。ほなご馳走様。お皿つけとって!帰ってきたら洗っとくわ」
「ええ、俺がしとくから。いっつもありがとうな。レンが着いてきてくれて、ほんまよかったわ。なんかあったらすぐ言うんやで」
ランドセルを背負い、出ようとすると玄関先で真島さんに頭を撫でられた。少しむず痒い気持ちになる。嬉しいけど、ほんまは神室町戻りたいん知ってるけど、何もできてあげれへんから。真島さんの胸倉を掴んで、引き寄せて頬にキスをした。真島さんは驚いていたけれど。
「将来大物になるレンのキスやで。初めて家族以外にこんなんしたわ。将来、真島さん自慢できるように頑張るわな!」
「…やられたなぁ。ほな俺も」
不意に頬に唇が当たり、顔が真っ赤になった。悔しいわ、早よ大人になって見返したりたい。まだランドセル背負てるけど、いつか真島さん見返したるねん。
「大人になったら見返したるねん」
「ヒヒ、楽しみやわ」
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