嶋野のお嬢 | ナノ

  始まりの銃声




その日は朝から胸騒ぎがしていた。はぁ、こんな日は何かが起こる予感。起きた瞬間に嫌な予感。嫌な感じやわぁ。眠い目をこすりながら、目覚まし時計が鳴っているのを止める。すると、隣で寝ていた真島さんが私の体を抱き寄せる。


「レン、ちょっと早すぎへんか…」

「早ないよ、真島さん。もう8時やで、起きて」


まだ寝足りないようで、眉間に皺を寄せている。かわええ、真島さん…!額に唇を落とす。嶋野組で昨日飲みすぎたもんなぁ。でも今日は堂島組長と食事会や。所謂ランチというやつ。私だけ誘われている。…堂島組長女の子好きやからなぁ。大吾くん嫌がってたけど。

でも大吾くんもよう遊んでたからなぁ。血は争えへんってことやな。


「朝ごはん作ってくるわ。パンとご飯どっちがいい?」

「ん〜、ご飯やな」

「はいよ、真島さん今日も大好き」

「…できた嫁!襲ったろか」

「もう、時間ないねん!」



ベッドに腰掛けていると、後ろから引っ張られ首筋に顔を埋めてきた。ほんまに私のこと好きすぎへん?まぁ、私もやけど。用意しなあかんから、頬にキスをして、起き上がる。真島さんは不服そうな顔をしていた。



「堂島の叔父貴と飯やろ。あの人レンに色目使ってくるからなぁ。」

「大吾くんも女の子好きやし、親子やねん。ええやん、女っていうだけで可愛がってもらえんねんから」

「…手出されたら親父に言いや」

「そんな怖い顔せんの。さすがに堂島組長もわかってはるわ。嶋野の親父の娘やで?」

「わかっとる!」

「んん?もしかして、真島さんヤキモチ妬いてる?」

「やかましい!ボケ!」

「はぁ〜、真島さん可愛すぎて尊いわぁ」

「ほんま、黙らんかったら犯すで」

「怖い怖い!ほな、朝ごはん作るわな」



多分これ以上からかったら、えらいことなる。立ち上がってエプロンをつけて、朝からご機嫌で鼻唄を歌いながら、朝食を作る。ご飯はよ炊かないと。あと味噌汁作って、鮭焼いて、あ、ウィンナーも焼こか。サラダはキャベツの千切りでええか。納豆も置いとったろ。


ご飯がもうすぐ炊けるというところで、まだベッドから出れない真島さんの元へ行く。手の甲を顔に乗せて、考え事をしているみたい。髪の毛サラサラで色っぽいなぁ。髪の毛を手でといてみたり。


「なーんか、今日嫌な感じすんなぁ」

「やっぱり?私も朝から気分良くないねん。なんかありそうやなぁ」

「…レン、気ぃつけろや。巻き込まれんなや」

「真島さんもね。はい、朝ごはんできたよ」


真面目な真島さんも好きやなぁ。



____________________



堂島組長と食事会した帰り。いつも通り愛想良くさせてもろて。今日は引き抜きの話をされていた。自分で言うのもなんやけど、シノギもどんどん増えて行ってるし、美人やし、喧嘩強いし、言うことないもんなぁ。

ほんで、夜の誘いもあったけれど。堂島組長、気に入ったらとことんやもんなぁ。嶋野の親父通さんとだめなんで、って言うといた。私を抱くなんて、親父は絶対100%って言うてもええくらい、許さん。真島さんでもかなり嫌そうやから。


そう言うたら引いてた。
これからそうやって、やり過ごそう。すいません、でも堂島組長と一夜共に過ごすのもいいかもしれませんね、とリップサービスしといた。上手そうだと。…でも親父と同じ年くらいやから、なんか複雑やけどなぁ。


今は中地さんと一緒に神室町を歩いている。シノギをしているキャバクラに最近悪質な客が来るからどうにかしてくれと。行くまでに昼間あった出来事の愚痴を零していた。


「なぁ、中地さん、小さい頃から知ってる女とできる?」

「うーん、難しいかもしれんけど、堂島組長も女好きやしなぁ。それだけレンが魅力的やってことちゃう」

「若い女が好きなんやろなぁ。中地さん、上から下どこまでいける?」

「俺いくつでも構わんねん。来るもの拒まずやわ」

「さすがモテる男はちゃうなぁ。…ってあれ、風間組の錦山さんちゃん」



前から急いで走っている錦山さん。血相を変えて走っているから、何かがあったに違いない。すれ違い様に声をかける。


「錦山さん、どないしたんですか!?」

「由美が、由美が危ねェんだよ!!堂島組長に…!」



その一言だけを言って、足早に去っていく錦山さん。中地さんと顔を見合わせて、どうするか考える。由美、ってあのセレナの由美さんのことやと思う。桐生さんがずっと片思いをしている人。確かめっちゃ美人。…堂島組長連れて行ったか。


「中地さん、どないする?」

「気になるけどな。風間組と堂島組長の話やろ。あんまり深追いせんほうがええんちゃう」

「そやな。嶋野の親父に怒られるかもしらんし。…でも後で顔出そうかな。事務所に」

「俺はええわ。ややこしそうや。…気になるなら行って来たらどうや」

「ええ、うーん。シノギのキャバクラ行ってからにするわ」




早く行っとけば、なんてありきたりな後悔するもんやとはこの時は思ってもなかった。


気づいたら、桐生さんは親殺しとして、警察に連れて行かれていた。





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