ゲームは泥沼化
東城会本部、相変わらず大きい建物の外で待機しとる。真島さんはえらい暇そうや。かくいう私もそうやねんけど。はよ会議終わらんかなぁ。そしたら風間組長や堂島組長に会えるのに。その時真島さんがにやりと口角を上げて、こちらを見た。私も思わず笑ってまう。
「なぁ、レン。なんか勝負せんか」
「ええなぁ。何する?」
「桐生チャンがおる匂いするねん。あいつここ来てるわ」
「ほんまか。じゃあ桐生さん先に見つけて、この場所連れてきたら勝ちにしよか」
「よっしゃ、制限時間は?」
「会議終わるまで」
「ほんなら始めよか!勝ったら今日の夜好きにできるなんてどうや?」
「ええで。真島さんの腰抜かせたるわ」
「ヒヒッ、それもそれでありやなぁ」
いるかわからへん、真島さんの勘やけど桐生さんを探す。あのグレーのスーツはあんまり見かけへんからなぁ。しかもオーラでとるし、すぐ見つけれると思うねんけど。まぁ、広い敷地内やから、見つかるんかなぁ。
黒服の男達をかき分けて探すと、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、きょとんとした顔の桐生さんがいた。
「おう、レン。そんなに走って何してんだ。」
「うわ、ほんまにおった!桐生さん、みーっけ」
「な、何で引っ張るんだ…!」
「しっ!桐生さん、少しの間黙って私に着いてきてください。あとでなんでもしますから」
「ああ。わかった。だが、会議が終わる前には戻るぞ」
腕を組み、元の場所へ連れて行く。何が何だかわからん桐生さんは引っ張られるがまま。真島さんに桐生さん取られんように、隠れて行かなあかんなぁ。そっと、黒服に紛れて行く。
途中錦山さんがいたけれど、また後で声をかけることにしよう。
やっと目的の場所が見えてきたと思ったら、いきなり後ろから押された。驚いて後ろを振り返ると、桐生さんが倒れかかってきた。それを支えきれず、一緒に倒れる。
「桐生チャン、やっと見つけたでぇ。やっぱりおるおもててん。俺の勘は鋭いな…って何やっとるねん!!」
真島さんが後ろから桐生さんを突撃したのだろう。その勢いで私と桐生さんの唇が重なってしまった。何のラブコメやねん!!って突っ込みたくなる!お互いすぐ離れて、気まずい空気が流れた。真島さんの顔を覗き見ると、何故か笑っていた。余計に怖いわ。
「ほぉ〜、桐生チャンがしたことは俺の女を盗るっちゅう宣言やなぁ?」
「いや待ってくれ、兄さん。これは事故だ。そんなつもりは決してない」
「やかましい!ええわ、桐生チャンと喧嘩する口実ができたからなぁ。レンは今夜覚えとってや。俺はヤキモチ妬きやねん」
「知ってますぅ。朝まで寝ません。」
恐らく桐生さんと喧嘩できる嬉しさもあるのやろう。やけど、少し複雑なのかもしれへん。初体験が桐生さんということについて、未だに気にしている人やから。ほんま、真島さんは可愛いなぁ。
派手に喧嘩をしているので、どんどんと人が集まってきた。お互い強いので、全然終わらない。見守っていると、横から肩を叩かれた。そちらを見ると柏木さんと錦山さんの姿があった。2人とも呆れ顔である。
「レン、これはどういうことだ」
「柏木さん!そうですねぇ、2人とも喧嘩好きなんで。口実を作ってしているところです」
「はぁ…ここをどこだと思ってんだ。おい、あいつらを止めてこい」
「錦山さんも、大変ですね。私、真島さん止めますね」
「あぁ、頼む。真島さんの相手するの、懲り懲りだからなぁ。桐生は任せろ」
真島さんが蹴ろうとした時に、間に挟まると、寸止めで止まった。はぁ、とため息を吐かれる。充分楽しんだはずやけど?
「楽しかったやろ?」
「まぁな。桐生チャン、相手してくれてありがとうなぁ。でも次レンに手を出したら、いくら桐生チャンでも知らんでぇ?」
「いややわ。脅しなんて。桐生さん、お世話になりました。もう会議も終わったらしいんで、親父達を迎えに行きましょう」
「レン、風間の親父とまた飯行くぞ」
「柏木さんのお誘いなら、喜んで!」
「…ほんま俺に心配ばっかりかけさせよって。桐生チャンどう思う!?」
「あれがレンなんじゃないのか」
「…わかっとう口聞くなや!ボケ!」
「理不尽やで、真島さん。ほら、組長待たせたら怒られるで」
真島さんの腕に手を回して、引っ張ってそこから去った。ほんまやきもちよく妬く人やなぁ。可愛いけど。嬉しいけど。こっそり不意打ちでキスしたったら、組長に見られて、ばちばちにいかれました。
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