己を貫く道へ
※未成年の飲酒は法律上禁止されています。
無駄に話の長い校長や、先生の話も早く終わって欲しかった。何故なら今日は嶋野組に入るために、組長と杯を交わす。そして、嶋野組の皆で私の卒業を祝う会と、それが終わったら、真島さんとデート!やっと制服も終わりや。はよ脱ぎたかった。体育館の後ろにはおとん、おかん、真島さんが見てくれている。周りから極道や、思われてビビられとったけど。
式が終わり、教室へ戻るとすすり泣く声が聞こえる。でも、私にはそんなん関係あらへん。やって友達おれへんし。卒業証書持って、門で待ってくれている3人に向かおうとしたら、一斉に男に止められる。逃げようおもたら、追いかけてきよった。卒業式に告白なんか苦い思い出になるから、やめとけ思うのになぁ。
門のところで立っていた3人に目掛けて走る。でもその後ろに結構な大人数の男引き連れていた。その様子に驚いていた真島さんも可愛いなぁ。真島さんの胸に飛び込む。おとんがパンツ見えたと怒っていたけれど。見たのであろう男子生徒の頭を殴っていた。1人脱落や。
「なんやこいつらは!」
真島さんに抱きついている私を取り囲む。なんで好きになってくれるんやろなぁ、あんまり絡んだことないのに。少し男子生徒達は真島さんに怯えていたけれど。
「嶋野さん!好きです!」
「悪いけど、私にはこの人おるから無理やで。ごめんな。受け付けてるんは舎弟だけやから。ほな」
「まぁ、わしの娘振り向かせたいんやったら、そんな弱かったらあかん。強い男が好きやからのぉ。」
おとんが落ち込んでいる男子生徒に声をかける。そういうところが男に人気出るんやと思うで。やから組員さん多いんやろなぁ。真島さんの頬にキスをする。いきなりで驚いたらしい。
「ちゃうよ、真島さんが好きやねん。なぁ、真島さん」
「真島、照れとるから離れたり。お兄さん達ありがとうね。ほな」
4人で歩き出す。前にはおとんとおかんが2人で並んで、後ろには私と真島さんが歩いていた。なんで手ぇ繋いでくれへんの。ふーん、繋いでくれるまで穴開けるほど見たるねん、と意気込んでいたら、自然と手をつないでくれていた。
「そない見つめんでも手ぇ繋いだるから安心せぇ。…あと卒業おめでとう。やっと手ぇ出しても犯罪やないわ」
「犯罪なんかいくらでもしてんのに?おかしなこと言うなぁ」
「それとこれとは別や!まさか、あんな男子高校生に人気あるとはおもとらんかったわ…いや、人気あるやろな、おもてたけど」
「体育館の裏に何回呼び出されたか、わからんくらい行ってたで。行かんのも可哀想やしなぁ。まぁ、なんかわからんけど、人気はあってん」
「レンのカリスマ性やろ。よーわからんけど、惹かれるとかちゃうか」
「カリスマ性なぁ。なんでもええわ」
運転手付きの車に乗り、事務所へ向かう。その間にスーツを着て、髪も束ねた。似合てると真島さんに言われ、照れてまう。照れてる場合やないねん。事務所に着いた後、嶋野組の皆がいて、杯が用意されていた。神妙な面持ちで囲う。 真島さんもおとんの横に並んでいた。
「嶋野の子になる覚悟はできとるんか」
「はい、できてます。」
「わしが親父、レンが子の杯や。飲んだら死ぬまで極道、それをわかったなら飲めや」
差し出された杯を飲む。そして頭を下げた。
「今日から、嶋野組に入らせていただきます、嶋野レンです。兄さん達には世話かけるかもしれませんが、精一杯努めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」
「よし、お前ら!レンの卒業と嶋野組に入った祝いや!はよ酒持ってこんかい!」
そう組長が言うと兄さん達がお酒を持ってくる。おかんは料理を持ってくる。嶋野組はこういうことになったら、大はしゃぎする。いろんな人とお酒を交わし、酔っ払ってくる。本当はお酒なんか飲んだらあかんねんけど。真島さんは、ほぼ裸で踊ってた。酔っ払って頭が回らんくなってきた。
その場にいた西田さんの肩を借りる。
「あ、お嬢…まずいです」
「お嬢も敬語もなしにしてください、西田さん。少しお肩をお借りしますね」
「俺の肩はまずいで…!」
「レン〜西田〜何してんねん!!」
「ま、真島さんッ!」
肩を借りていた西田さんがぶっ飛んだ。私はそのまま後ろに倒れる。頭をぶつける前に真島さんに抱きとめられる。はぁ、真島さん好きやわぁ。真島さんの首に手をまわす。抱き締めてやった。
「真島さ〜ん、だいすき!なぁ、早くぎゅってしてやぁ」
「酔っ払いすぎや!はぁ、何でこないなことなってんねん。酔っ払ったらこうなるんかい」
「何を言うてるんよ。酔っ払っても真島さんしか見てへんやん。安心しぃや」
そう耳元で囁くと、真島さんは黙って私を持ち上げた。どっか連れて行ってくれるん?回らない頭で考えても無駄やった。
「親父、レン預からせてもらいますわ」
「おう。大事にせぇよ」
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気がついたらベッドの上やった。ここどこやろなぁ、と頭を働かせる。煙草の匂い、真島さんの煙草や。横を向くと、ベッドに座って煙草を吸っていた。ジャケットを脱いで、般若が私を見ていた。綺麗な刺青や。後ろから抱きしめる。
「起きたんかい」
「おはよう。私何してたん?」
「酔っ払って西田とイチャイチャしてたで」
「嘘や!イチャイチャはしてへんやろ」
「どうやろなぁ」
「ここ、真島さんち?」
「おう。デートしようにも、お前があないに酔っ払ってたらできへんやろ」
「ごめんなさい」
「凹むなや!…俺のベッド狭いけど、許せや」
「ううん、真島さんの匂いがするから、いいねん。めっちゃ落ち着くわ」
「…」
「ついに真島さん、一緒のベッドに入ったなぁ。くっつこうや」
「いちいちやかましい。今日は俺の好きにやらせてもらうからな!覚悟せぇよ」
「お願いします!」
とても幸せな夜になりました。
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