未来は明るいはず
土曜日の朝、朝から大人っぽい格好に化粧もする。はぁ、いつも私が無理やり真島さんとデートしてるから、今回、真島さんが計画してくれるなんて、めっちゃ緊張する。朝起きて、日課通りおとんとおかんと食卓を囲む。
おとんは新聞読みながらこちらを見て感心していた。そんなじろじろ見たら恥ずかしいやん。
「なんや、今日は真島とデートかいな」
「せやねん。似合てる?」
「若い頃のお前みたいや。な?」
「太さんが私をよう口説いてた時やね。うん、かわええわ。真島も手ぇ出さんと、よう頑張ってるわ」
「そろそろ手ぇ出してほしいねんけどな。あ、おとんに言いたいことあんねん」
私の発言に複雑な気持ちの様子のおとん。なんだかんだ、娘が自分の子である真島さんを10年間ほど思っているのが不憫なのであろう。そろそろ結ばれてもええやんな?おとんも真島もええ加減レンの魅力に気づけって言うて殴ったん知ってるし。
箸を置き、今日の本題を言おうとする。ちょっと緊張するわぁ。おとんの目を見つめて言う。
「嶋野組長、私を組に入れてください」
「…はぁ、そんなことやろ思った。お前女がヤクザってどういう事かわかっとんのか。力でやられる世界やぞ」
「力でなら、負けへんけど?このお願いのために、いろんな人に頭を下げて力つけてんねん。」
「あの気分悪い風間の奴にも銃教えてもろてたくらいやもんなぁ。…甘ないでこの世界」
「せやけど、私がおるのと、おらんのやと全然ちゃう思うけど?頭キレる、強い、美人で損はないんちゃう。組長にとっては扱いやすい存在や、思うねんけど」
「…お前が娘やなかったらなぁ。娘やからこの世界に入れたない。辛い思いさせたない。傷物にしたないねん」
「真島さんにもろてもらうから、大丈夫やで。おとんとしての気持ちはありがたいねんけど、私組長としてのおとんみたいに自分貫いて生きたいねん。嶋野組に入れてください。きっと今いる人たちは困惑するかもしれへんけど、後悔させへんから」
おとんはまた溜息をついて、困っていた。自分でもわかってる。男だらけの世界に割り込んで、ええもんかと。でもあんなに自分らしく生きれるなんて、羨ましい。そうなりたい、おもてたから、しゃあないわ。我慢なんてしたないし。
「…わかった。お前が高校卒業したら嶋野組入れ。下っ端からや。特別扱いはせん。でもお前の傷ついた顔は見たくないからな。家ではおとんでおらせてくれや」
「〜っ!おとん大好き」
「うわ、味噌汁溢れるからやめんかい!でも久々やなぁ、可愛いやっちゃ」
立ち上がって、目の前に座っていたおとんの後ろ側に立ち、後ろから抱きついた。おとんの顔にスリスリと顔を寄せると、おとんが喜んでいたのがわかった。おかんもその光景を微笑んで見てくれてた。
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「はぁ!?嶋野組入るんか!?」
「うん。真島さんの妹分やで、よろしくな」
「よう親父も許したなぁ。俺は反対やけどな!」
「なんでよ、真島さんとおれるん増えるのに。」
「やから、乳当てんな!ほんまお前とおったら、振り回されるわ…」
今日は少し足を伸ばして、水族館へとやってきた。真島さんがこんなとこ連れてってくれるなんて、珍しい。ちゃんと考えてくれてんなぁと思い、腕を組む。周りの目線が痛いのもどうでもよかった。真島さんが私のために考えてくれたデートプランやもん。1日楽しまな損やろ。
「うわ、真島さん見てよ!ごっつい魚おんで。可愛えなぁ」
「あんなん可愛えか?ズレとるやろ」
「変な顔してるやん。真島さんもあの魚の真似してや」
「無茶振りやな。…こんなんか」
「あっはっは!めっちゃ似てる!可愛え!真島さんだいすき」
水槽の前で、その魚と横並びになり真似をする真島さんが愛しくて仕方ない。抱き着くと、真島さんは照れた。よう照れる人やなぁ。
「アホ!声でかいねん。周りに見られてるやんけ!」
「真島さんも声でかいねん!周りなんかどないでもええねん。真島さんしか見えてへんもん」
「恥ずかしいこと言いなや…周るで」
「お、照れたんや」
「やかましい。こっち見んなや!ちぃちゃかったあの娘がずる賢い女になってるわ」
「当たり前やろ、誰やおもてんねん。成長しかしとらんわ。はよこの体味おうてええのに」
頭をまた叩かれる。DVや!いうて叫んだらアホかとまた言われた。アホアホいいなや。拗ねたふりしたら、いつの間にかソフトクリーム買うてきてくれてた。ほんまに真島さんはできる男やなぁ。腕を組むと嫌そうな素振りは見せへん。
そのまま水族館を出るも、まだ午後の4時だった。
「なぁ、真島さんこっからどうすんの?」
「今からはスーパーや!」
「え?どういうこと?」
「久々に飯作ってもらお思てな。俺んち行こか」
「ええ!真島さんち!それは嬉しい!夜は何かあるなぁ」
「何もないわ。俺の家、必要最低限のもんしか置いてないから一式買わなあかんわ」
「真島さんのベッドってシングル?」
「人の話聞けや。シングルや」
「狭くても真島さんの横おれたら私それでええからな!」
「何を言うてんねん。寝かせへんで」
「え、朝までやるん?ええよ真島さんにいくらでも付き合うし」
「そんな意味とちゃうねん!はぁ、お前に手ぇ出さんから安心して来ぃや」
「そっちの方が安心せんわ」
スーパーで調理器や食材を購入した後、車が着いたところは高級マンション。遂に真島さんの家までやって来れた。真島さんが鍵を開けて、ついに入る。ああ、緊張してきた。私はやってやるぞ。
次回レン、真島を襲うの巻!!!
いやもう、そろそろいいやろ?真島さん。
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