▽ 4☆砂上
男と女、結局は惹かれ合うもの。
☆☆☆
「英梨、好きだ」
言ってしまった。
真夜中、彼女の部屋で。
彼女の、枕元で。
英梨はぐっすりと眠っていた。
彼女は微動だにせず、長いまつ毛が頬に影を落としている。
月明かりだけの部屋で俺様は告げた。
「…………真田の旦那、済まない」
人形のように白い肌に、赤いくちびる。
理性が崩れて行く。
もとより、そんなものが俺様にあったとは思えないけれど。
そっと頬に触れる。
やわらかくて、気を失いそうになった。
額、瞼、頬。
順に俺様の唇で触れていく。
彼女は絶対に起きない。
確信している。
「…………英梨、英梨ッ」
零れる声は切なくて、胸を抉っていく。
どうか、また俺様の隣にいてくれ。
隣で、笑っていてくれ。
友達で、いいから。
「…………英梨ッ」
友達で、良かったのに。
こんな感情を抱くくらいなら、貴方が男であってほしかった。
否、男であっても、惹かれていたかもしれない。
英梨、貴方は。
「…………これで、良かったんだ」
俺様と出会うべきではなかったんだ。
狂った運命は、今日で終わりにしよう。
明日からはきっと、もっと綺麗な世界になっているはずだ。
邪魔なものはもういない。
俺様は、英梨のくちびるに口付けを落とした。