▽ 5☆手錠
どうせならさ、ハッピーエンドで終わりたいよ。
☆☆☆
「…………幸村ッ!」
英梨の悲痛な叫び声が屋敷に響いた。
「嫌だ、嫌だ!嘘だ!嘘だよ!」
真田幸村が、戦で命を落とした。
その知らせであった。
「…………どう、して」
彼女は泣き崩れた。
畳にぽたぽたと涙が落ち、じわりと滲んでいく。
俺様は、彼女の肩にそっと手を乗せた。
「…………英梨」
「どうしてよ……返して……」
それが俺様に向けられたものかと思い、ぎくりとした。
ぼろぼろと泣き続ける彼女が支えを求めて俺様の胸に縋り付く。
ずっと求めていた温もりに、思わず頬が緩んだ。
「…………旦那は、立派だったよ」
「佐助ぇ……」
喘ぐように泣く彼女に、恍惚とする。
俺様を求めているようで。
そんな気がして。
未来が明るく差し込んでいる気がしていた。
「幸村……幸村……」
もう、俺様は傷つかない。
彼女の叫ぶように求める声が俺様でなくても、構わない。
邪魔なものはなくなったから。
「…………英梨」
「幸村、幸村……」
壊れてしまえと、強く抱き締める。
あの日。
あの夜、旦那と英梨に薬を盛ることにしたのだ。
片方は睡眠薬、片方は毒薬。
俺様もどちらがどちらかわからないようにして、適当にお茶に混ぜた。
その結果が、この未来。
天は俺様に味方していた。
そう感じずにはいられなかった。
「幸村ぁっ……」
今夜から、もう俺様の名前しか呼べないようにしてやるよ。
どろどろになるまで、愛してあげる。
英梨。
ーーーその晩。
泣き疲れた彼女が眠り、少し席を外した。
戻ってみると、英梨はおらず、薄い手紙が布団に置いてあるだけだった。
内容はーーー覚えていない。
しかし、それは彼女が本当に真田の旦那を愛していることがわかる文面だった。
「…………英梨」
もう彼女はこの世にはいないかもしれないと、風で悟る。
しかし俺様探し続ける。
何処で何をして誰を愛していようと、俺様は英梨が好きだから。
end.
後書