▽ 「suspended」
月明かりの差し込む夜だった。
彼女に欲情するのは、これが初めてではない。
ただ、今夜の彼女の魅力は格別だった。
「…………すぅ」
微かに寝息をたてて、横向きに眠る彼女を月が青白く照らしている。浴衣の合わせから真っ白な胸がのぞいていた。
ごくり、と喉が鳴る。
「…………英梨」
反応はない。当然だ、眠っているのだから。
私はそっと彼女の横に膝をつき、頬に指を滑らせた。
「…………」
「…………子羊」
触覚も鈍感になっているのか、まったく反応を示さない彼女。まるで。
まるで、死体のようだった。
「…………ッ!」
その考えが頭を過った瞬間、私のモノが硬化した。火照った身体が疼き出す。
私は欲望のままに、彼女の浴衣を脱がせた。
「…………ほう」
感嘆する。彼女の身体は艶めかしく、なにより美しかった。熟れた果実のような乳房に引き寄せられるように手が伸びる。
「…………」
反応はない。
何度も何度も胸を揉む。その頂を押しつぶし、舌で愛撫した。
「身体は正直ですねぇ」
だんだんと汗ばむ白い肌に、桃色の乳首が主張し出した。ふにふにとした食感に溺れそうになる。
「…………ひとつになりましょうか、子羊」
私のモノも、限界が近い。
だらだらと汁を零すモノを取り出し、彼女の顔のそばで何度か扱く。このまま彼女を汚してしまいたくなるが、まずはひとつに。
そう思い、私は彼女の下を脱がせた。
「…………おや」
彼女の蜜が溢れていた。
まだふれていない突起が主張し、男を誘うように腰を揺らした。
堪らず、突起をこねる。
「…………ぅん!」
起きたかと、驚いた。
手を止めて彼女の顔を盗み見るが、眉を潜めて少し唸っただけだった。ホッとすると同時に、喘ぎよがらせたいという思いもふつふつと湧いてきた。
「…………さて、子羊、行きますよ」
快楽の地獄へ。
呟いて、一気に挿入した。
「…………んあッ?」
私の汁と彼女の蜜が潤滑油となって、何の抵抗もなく入った。びくりと痙攣したが、彼女は起きない。ゆるゆると抽送すると、無意識だろうが彼女の腰が物足りないというように揺れ出した。
「いやらしい子羊ですねえ、貴方は」
一突きごとに弾む乳房に吸い付き、頂を噛む。お返しとばかりに締め付ける彼女が、愛おしかった。
「…………くッ」
耐えきれず弾けた欲をすべて中へ送り、抜かずにぐるりと彼女を裏返し律動する。柔らかい尻が心地よく、高ぶりがまた湧き出した。
「英梨ッ」
こうして死んだように反応のない彼女は、蠱惑の存在となった。
それから私は眠った彼女との行為に溺れることになる。
そしてこのことを、彼女はまだ知らない。