▽ 01 いつからかな不思議
私は、きた村英梨。
完全無欠のヒーローだ。
- - - - -
「きた村室長!」
「はぁい」
ここは過去管理委員会、特別対策室。そして私はそこの室長、きた村英梨だ。泣く子も黙る、超一流のヒーローである。
額に汗を浮かべて走り寄って来た部下に振り返ると、彼はびっと端末の画面を私に向けた。
「1059世界での均衡が崩れているんです!」
「およ」
確かに画面は不穏な青紫で染まり始めていることがわかる。平和時はただの真っ白い地図なのです。
机の上に常備したミントタブレットを三つまとめて口に放る。
「んじゃ、私が行きますか」
「し、室長?!」
着ていたメイド服の腰のリボンをきつくして、立ち上がった。私だって、たまには指図するだけじゃなくて行動したい。戦いたい。
ばばっと適当に申請書を書いて、私の判を捺した。
「いってきます」
いざ、戦国!
- - - - -
「家康くん、三成くん、あとは頼んだよ」
「この三成、家康と共にこの命にかえ、お役に立てることを誓います」
時系列としてはこの辺りか。
私はタイムトリップを始めた。
1059世界。
思い入れがないと言えば嘘になる。
あの世界から帰ってから、不思議なくらい存在感を増していく彼。
胸を占めるこの思いは、正義ではなく恋。
彼の運命を変えるため、私は正義にでも悪にでもなってやろう。