05




ああ、嬉しいなあ嬉しいなあ。にやにやするのを止められないよ。今日のお昼ご飯は久しぶりに幸せな気持ちで食べられる。……嬉しいなあ。

「どこ行くんや」

お弁当を持って屋上に行こうと席を立とうとしたら、頭を抑えられた。重力に従って、浮かせた腰がまた椅子にひっつく。

「ざいぜんくん……!」

マイフレンド財前くん。なんだかキラキラして見えるよ!

「……うざ」

あ、そうですか……一人で舞い上がってごめんなさい。

しょぼんとしていると、財前くんが私の前の席の……何とかくんの椅子に座った。彼の手にはコンビニの袋。
何とかくんとご飯を食べるんだろうかと思いながら財前くんを見ていると、なんやねん、と睨まれた。

「お前、これから昼は教室で食え」
「え」
「とりあえず教室におらんと誰とも喋れへん」

え、でも。教室でお昼ご飯を食べるのは何だか緊張するな……。

「は? 声ちっさい。聞こえん」

ごめんなさい。


もぐもぐ。
もぐもぐ。

……何とかくんは現れない。財前くんはその人を待ってるんじゃないの?

「なんか喋れ。喋る練習せえ」

あ、も、もしかして、私と食べてくれてる……?

「あの、えーと」
「苗字、「あの」と「えーと」は禁止や」
「え」

そんな殺生な……。

「あ、ざ、財前くんは、どうして」
「おん」
「わたしなんかと、ご、ごはん食べてくれるのですか……?」

言葉にしてから、ちょっと後悔した。勘違いだったら恥ずかしい。どうか勘違いではありませんように。

財前くんはジロリとこちらを見て。また視線を外してため息をついた。うう……。

「…………友達やからやろ」


「え? ご、ごめんなさい、聞こえません、でした」
「暇つぶしや」
「え、ええええ……ひどい、人外だ……」
「お前そういうことはハッキリ言うんやな」




2012/03/13


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