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苗字と同じクラスになったんは初めてやけど、俺は一方的に苗字を知っとった。

あいつは一年の時からほとんど毎日、昼休みを屋上の給水タンクの影で過ごしとる。誰かといっしょにおるとこは見たことあらへん。いつも一人。
俺もよく屋上にはおるけど、多分、あいつは俺に気付いてへん。まあ、用も面識も無いし、話しかけることもない。
二年になってクラスが同じになっても、精々ノートの回収の時とか、事務連絡しかせえへん。これからもそんな感じなんやろう。

そう思ってたんやけど。


三時間目の体育は男がソフトボール、女が陸上で。
グラウンドの一方で走っとる女子らを男共がちらちら見とる。あほらしい。

打順が俺に回ってバッターボックスに立った。素人のピッチャーが投げるトロいボールは俺んとこに真っ直ぐ飛んできて、バットを振りぬくと簡単に飛んでいく。
それを俺のチームが騒いで喜び、相手のチームは項垂れるのを感じながら一塁へ走っとると、遠くから甲高い悲鳴が聞こえた。

……やってもうた。


先生に断ってそっちに走ってくと、俺が打ったボールは、グラウンドの隅に立っとった苗字に当たったらしかった。何人かが苗字を囲んどる。
かき分けて苗字のそばにしゃがむ。苗字は右肩をさすっとる。

「すまん、俺が打ったやつや。大丈夫か?」
「え。あ、だいじょ、いたっ」
「保健室行くで」
「い、いいいいいですから、ほんと」
「ええから黙れ」
「っ!?」

ごにょごにょ口の中で喋る苗字の左腕を掴んで立たせる。女子がなんや言うとったけど、知らんわ。そのまま苗字を保健室に連れて行った。



2012/03/10


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