アネモネ:可能性
ボクってさ、パラレルワールドを覗いたりすること以外にある『お話』を知っているわけじゃない?だからさ、正直なところ7³を集めるのも楽勝だったんだよね。 そうそう。7³の一角のボンゴレリングの適合者の10年前の綱吉クン達が来ることも。大事な友達の正チャンが裏切ることも。イタリアの主力戦でミルフィオーレが負けることも。チョイスでボクらが勝っちゃうことも。ユニちゃんが魂をボクのようにパラレルワールドに飛べることも。全て知ってたんだ。卑怯?アッハハ!返す言葉がないからね。素直に受け取ってあげる。
「私はミルフィオーレファミリー、ブラックスペルのボスとしてボンゴレとの再戦に賛成です。あの約束は…白蘭と入江さんとの再戦の約束は、本当にあったからです」 「なんでそんなことわかんのよ!」 「まあまあ、落ち着いてよブルーベル。ボクの言うこともユニちゃんの言うことも、どちらにも証拠なんてないんだからさ」 「なら!「でもね」」 「ユニちゃんは2。最後に決めるのはボクなんだ」 「…そうですね、分かりました。では私はミルフィオーレファミリーを脱会します」
うんうん。それもわかってたよ。ユニちゃんが幼くってまだまだ弱い綱吉クンを頼ることなんてさ。それにおしゃぶりを持ち出すことも、全てさ。 でもまだまだ白馬の王子様はユニちゃんのお願いにビビってるようだし、さ。本当。ボクには巻き返しのチャンスがたーっぷりあるってことをわかってるのかな?この小さなお姫サマと小さな騎士クンは。
「今ならまだ許してあげるからさ。帰っておいでよ、ユニちゃん」 「白蘭。貴方がなぜ私を欲しているかは、よくわかっています」 「…そう。おしゃぶりを輝かせられる君は、ボクが新世界の神になるために必要なのさ」 「なぁっ!?」 「いいえ。言ったはずです。私は貴方のしようとしていることを知っている、と」
ピクリ、と片眉が上がったのを感じた。けどすぐにまた道化のような笑みを貼り付ける。うんうん、やっぱりボクは笑ってる方が似合うよね。
「アハハ♪ミルフィオーレを脱会しちゃって、本当にいいのかな?ボスのユニちゃんが裏切ったとして、残されたブラックスペルがどうなってもいいのかい」 「皆は…皆はわかってくれます」
ああ、でもボンゴレの大空はこの期に及んで尻込みしてるみたいだしさ。君はお姫サマを守る騎士なんだからさ。もっとしっかりしなきゃ。そんなんじゃぜーんぜん、頼りにならないよ。 家庭教師の晴のアルコバレーノに叱咤されて、やっと綱吉クンはよくユニちゃんの顔を見た。そんな瞳を見たのはボクだって久しぶりなのに。輝く二つの青い光を前に見たのはいつだったか。
「来るんだ!オレ達と一緒に!」
ボクより幼い大空の二人は、とても眩しい輝きを放っていた。
「(ああ、少し、羨ましいな…なんて)」
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