キンセンカ:乙女の美しい姿

ネタ帳にあったものを改変、まとめただけのもの。

▽▽▽

君は君自身以外の君を認識できるかな?
…ああ、ボクの訊き方が悪かったネ。君は、『平行世界の自分』を理解できるかい?自分でありながら別人がある感覚が想像できるかい?

平行世界の自分っていうのは確かに自分でね。でも本当の自分じゃないんだ。うーん…上手い具合に説明できないネ。でもこればっかりは感覚によるものだからさ。ボクからはこれ以上なんとも言えないな。


ボクはたくさんいる中の『ボク』の一人だけど、たくさんいる『ボク』の中で唯一の特異点。唯一のオリジナル。


よくわからない?アハハ、こっちならボクも簡潔に説明できるよ。単刀直入に言っちゃうとね、ボクは『ボク』である前に『ボク』以外の『誰か』だったのさ。
転生成り代わりってやつ?それそれ♪しかも知識ありってやつかな?うーん、もうわかってると思うけど、今のボクは平行世界を行き来できる彼なんだよね。ま、平行世界のボクはボクじゃないけどね。つまりボクはボクでありながら、平行世界のボクとは別人なんだ。
だからね、ボクはボクの思う通りに行動するんだ。いくらボク以外のボクと会話できたり知識を共有できたとしてもボクはボク。たとえボクでもボクの決めたことを邪魔するなら容赦はしない。


「貴方が白蘭ですね」


ん?と名前が呼ばれたからそっちを振り向いた。…誰だっけ?黒服に囲まれた白い装束の小さな小さな女の子。んー。でも会うのも初めてだからさ、知るわけないんだけどね。


「てっきり赤ん坊が来るかと…思ったよりずっとチャーミングだね」
「貴方は思ったより…普通だわ」


よく言われるよ。全く。ボクを何だと思ってるんだろうか。屈強な男や魔王のような恐ろしいものを想像しているのかな?


「立ち話もなんだからゆっくり話そうか。できればボス同士水入らずで」
「貴様そんなことが…!「いいわ」…姫!」


ぼそぼそと警護の男の一人に耳打ちしてユニちゃんはボクの元へと来てくれた。別れの挨拶ってやつなのかな?ハハ。可愛いことするんだなァ。さあどうぞ、と部屋に招き入れる。


「改めて。ジェッソへようこそ。ユニちゃん」
「…貴方は、一体何をしようとしているのですか」


何?と尋ね返してユニちゃんの顔を真正面から見つめた。うん。こうしてしっかりと見ると彼女の可愛さがよくわかるね。おっと。ボクは別にロリコンじゃないよ。そんな異常性癖を持った覚えはない。

彼女の瞳は吸い込まれるような青い色。そしてその瞳の奥に見える覚悟。
あーあ。大空のアルコバレーノに隠し事は通じそうにないみたいだね。うーん、でもね。ここで引き下がるわけにはいかないんだ。これはある意味でボクの使命なんだろう。すっ、とユニちゃんの額に手を伸ばした。ビクリ、と小さな体を震わせたのがわかった。


「まずは世界征服のために7³を集めなきゃね♪」


そしてボクは使命のために、謝罪の言葉を口にすることも許されないのだろう。

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