絶対の原則

等価交換。それすなわち錬金術の基本。

エドとアルはママを作ろうとした。けれど錬金術で命を作ることなんて芸当、出来ない。それ不可の領域。錬金術は物質を理解、分解、再構築する科学。其れ故にないものは作れない。同等の対価が存在しない為。

禁忌を犯した弟達はその代償として、エドは右腕と左足を、アルは体を失った。真理が罰を与えたのだ。見ていて痛ましいが、これは受けなければいけない罰。同情をしてはいけない。錬金術師という同じ肩書きを持った以上、けじめはつけなければいけないのだ。けど、家族としては…少しつらい。

あの日の痕跡は、まだこの部屋に残っている。錬成陣と血痕。罪を犯したという証拠の一つだ。エドとアルはすっかり萎れてしまい、頑なにこの部屋に来ようとはしない。その前に生きようとしていない。
わたしが先に二人が何をしようとしていたか知ってさえいれば。先に止めてさえいれば。これはきっと、わたしの責任でもあり、罪でもあるんだろう。


「ちょっと失礼。こちらの家のお方……な、んだこれは…!」
「中佐、裏にもいませ…これは…!」


お客さんだ。あまりにぼーっとしていたあまり、気付かなかったな。先日の一件はわたしにとってもそれだけ十分、衝撃的な出来事として心に刻み込まれたんだろう。
青い制服。アメストリスの軍人、だね。なんとなくどうしてこの家に来たのか、その理由がわかる。弟達は禁忌を犯したけれど、裏を返せばそれを実行に移すだけの実力があるのだ。弟を奪いに来たんだろう。

書斎の床を塗りつぶしているのは白いチョークで描かれた錬成陣と赤い液体。液体の方はその鉄の臭いから、ソレだとわかる。ここで何をしたのかを物語っている。


「これはエルリック兄弟の仕業か!どこにいる!?答えろ!」
「中佐、そう怒鳴っては」


するり、と二人の間を縫って部屋の外に飛び出した。待て!と後ろから叫ばれたけど、そんなの知らない。

わたしからママを奪って、その次は弟まで?そんなの嫌だもん。でも本人がそう決めた時は…、なんて考えるだけ、そんな場面を想像しちゃってるんだね。

mae ato
mokuji

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