絶対の原則

あの悲惨なことが起こった日から、エドとアルはピナコの家で暮らしている。家に来た軍人さんから逃げてここまで来たけれど、子供の足に追いつくのは大人には簡単だ。結局わたしが軍人さんを弟達の元へ導いてしまった。

エドに会いに来た軍人さんは、エドは話せるような状況ではないので、ピナコに話をし出した。国家錬金術師の何たるかを語り、こんな田舎までわざわざエドを勧誘しに来た。国家錬金術師になれば元の体に戻る方法も見つかるかもしれないから、だと。だから軍の狗になりたまえ、と。
ピナコは錬金術が今のエドとアルを絶望させていることから、錬金術師になることには反対している。わたしは色々と思い悩むところはあるけれど…エドの思うようにしてくれたらいいと思う。

人は愚かだ。大きな力を使って、錬金術を使ってこの国は何度も争いを起こしてきた。国家錬金術師、なんて大層な名前を付けているけれど、つまりは兵士だ。そこに関しては反対したい。お姉ちゃんだもん。家族にバカなことをして欲しくないと思うのは当然。

エドを国家錬金術師に推挙しに来た軍人さん――ロイ・マスタングという名らしい――が帰った後、彼と彼の部下の見送りに出たアル、ピナコ、ウィンリィにより、家の中はわたしとエドだけという状況になった。エドは今まで通りずっと黙っていた。けれど、さっきの軍人さんの言葉を反芻しているのだろう。


「テオ…俺、国家錬金術師になろうと思う」


あ、いつかのパパと同じ目。パパがママに、トリシャに向けていた目にそっくり。親子なんだな、って思った。そんな目をすることも、錬金術師であることも。何日かぶりに聞いた声を喜ぶことより先に、まずそれを思った。


「そ」
「お、こらないのか…?」
「何を?」
「……人体、錬成したのに」


禁忌を犯したことについて。もうエドは十分反省も、後悔もしているんだろう。小さな声だったけど、わたしの耳はしっかりとそれを拾った。


「怒ってるよ。でもね、それはわたしに謝ったことで済む問題じゃないの。わかる?」
「…わかってる」
「わかってるならいいの。国家試験、頑張ってね」


ん、と覚悟を決めた目でエドは頷いた。今のわたし、ちょっとお姉ちゃんっぽかった。
んっんー、あたしもそろそろ本腰入れてパパを探しに行こうかな?っと。

mae ato
mokuji

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