足りない告白

「ママ、大好きだよ」
「私もよ、テオ。だから、先に逝ってしまうことを許してね?」
「んー、ふふ!トリシャのこと大好きだから許してあーげない!」
「ま、ひどい!」
「でもきっとすぐに会いに行くから、その時になったら許してあげる」
「そんなに急がなくても…ゆっくりでいいわ」
「今までを思えばすぐったらすぐなの!」


ほんっと、強情。クスリ、っていう擬音が似合うトリシャの優しい笑顔がわたしは好き。甘くて、優しくて、ふわふわしてて。そんなあなたが好き。
トリシャの優しい目も、暖かい手も、栗色の髪も。全部が好き。安っぽく聞こえるけれど、好きなものは好きなんだから仕方ない。
窓の外に広がるわたしの第二の故郷は、まるであなた。頬を撫でる風も、甘い草の匂いも、澄み渡る青い空も。この大好きなリゼンブールの地を具現したような暖かいあなたは、無意識の内にわたしを包み込んでくれる。

ねえ、あなたはあとどれくらい生きられるの?真理に問えば答えてくれるのかな?ねえ、好きだよ。好き。何度だって言ってあげる。何度言っても足りない。好き。

パパより先にトリシャに会ったこと、パパより先にママと家族になったこと。それに加えて先に最期に会ったことを、パパに勝ったこと事典に加えておこうっと。……でもね、パパ。今帰ってこないと間に合わなくなっちゃうよ?わたし達がこんなにも永い時を経てやっと出会えた、大切な人の最期に間に合わないよ?ねえママ、死なないでよ。こんなに焦がれているのに、あなたはどうして死んでしまうの?

永過ぎる時を過ごしてきて、忘れかけていた何かを、知らなかった何かを君はわたしに教えてくれた。一緒に過ごしてきた時間はとても尊いものになった。
わたしね、わたし達ね、自分のことが嫌いだったけれど、あなたのおかげで好きになれたの。あなたのおかげ。だからこそあなたが愛おしいの。余計、愛おしいの。

血の繋がりなんて関係ない。そんなものではわたし達はくくれない。わたし達は家族。親友。


「ママ、トリシャ、愛してる。会えてよかった。嬉しかった」
「私も愛してるわ、テオ。家族になれて、親友になれて、これほどまでに幸せなことはないわ」


私の初めてのママ。初めての親友。私に優しさと愛を教えてくれた人。好き。大好き。愛してるよ。

mae ato
mokuji

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