紛い物の石

わたしの名はテオ。わたしを拾ってくれた偉大なパパが最初にくれたプレゼントだ。もう何百年前のことかは忘れてしまったけど、ずーっと大切にしている、わたしの宝物。ちなみにパパをパパと呼ぶのは、舌っ足らずなわたしではパパの長い名前を呼べなかったから。今わたしのことまぬけって思った人、死刑ね。

パパはある王国の錬金術師という者で、私に名前と衣服と食べ物、住む場所の次に知識をくれた。パパは国一番の錬金術師で、わたしはその助手。そのことはわたしにとって、とても誇りだった。

けど、大好きなパパはわたしの嫌いなアイツに時々取られる。わたしはアイツが大っ嫌いだった。出会った瞬間から嫌いとわかった。そしてわたしとパパはアイツに、人でないモノに変えられた。わたしはパパと違って“紛い物”だって言われたけど、同じような物。歳を取らない。死なない。真理を識った。アイツ、本当に嫌い。

あの日からわたしはずっと少女のまま。パパと二人。パパは自分が化物になったと嘆いていたけれど、そんなの全部アイツのせいじゃん。ムカつく。

山を越えたり、砂漠を越えたり。長い長い旅を続けて、わたし達はとある村に辿り着いた。そしてそこで一人の少女と出会った。後に彼女はわたしの親友になり、母になり、かけがえのない人になった。
わたしは“紛い物”なりに、パパは“化物”なりに、幸せと呼べる日々を手にすることが出来た。わたし達は家族となって、ごく普通の、ありふれた幸せを望むようになった。


そんなわたし。

mae ato
mokuji

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