下手くそな感情表現

「リゼンブールに帰ってくるのって久しぶりだね、パパ!」
「そうだなぁ」


わたしにとってはエドが国家錬金術師になった時から、およそ4年ぶり。パパは…どのくらいだろ?うーん、でもわたし達にとって時間なんてあんまり関係ないよね。間に合ったかどうかは別問題として。

丘の上にあった家が燃えて無くなっていて、パパはちょっと唖然としていた。エドが国家錬金術師になったその日、燃やすって決めたんだよね。教えるの忘れてた。だから今日はピナコの家に泊まることにして、今はお墓参り。

パパがママのお墓参りをするのって、これが初めてなんだよね。色々事情があってリゼンブールに帰ってこれなくて。だから初めて。
言いたいこと、いっぱいあるんだろう。パパもわたしに負けないくらい、ママのこと好きだもんね。

パパはわたしと違って表情を作るのが超絶下手な時がある。今もほら、眉間にぐっと皺を寄せて。ひっどい顔。泣きたいなら泣けばいいのに。黙ってその横顔を窺って、そうしたらパパの体の奥に、わたし達のものじゃない栗色が混じった金髪が見えた。


「ホーエンハイム…それに、テオ…!?」


久しぶり、とひらひらと弟に手を振った。すっごい嫌そうな顔してる。そんなにパパのこと苦手なの?

いいなぁ、エド。「大きくなったなぁ」なんて言われて。羨ましい。わたしがその台詞を聞いたのって何年前…ううん、考えないことにする。女の子は年齢については考えたくないものなの。
それにしてもわたしのこの体は成長しないから、いつの間にか身長を超えられていた。悔しいなぁ。エドだって平均的にはチビのくせに。わたしがお姉ちゃんなのに。

旅の途中で「鋼の錬金術師」の名前は何回か耳にした。弟が活躍してるのは家族として誇らしい。
そんなエドはパパに家を燃やしたことについて「逃げたな」と図星をつかれて、とても躍起になってて。一人でわたし達に背を向けて行ってしまった。いじわる。もうちょっと家族に対して言うことがあるんじゃない?パパもパパ。愛情表現が下手くそ。


「俺の若い頃そっくりだ」
「へぇ。パパのああいうとこ、見てみたかった」
「おいおい…」

mae ato
mokuji

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