*小梅、愚痴る*
麦わらのルフィ。懸賞金3億。 うふふ。ルフィくん、成長したのね。新聞で読んだわ。アラバスタで七武海のクロコダイルを倒し、エニエス・ロビーにて世界政府に喧嘩を売った、だなんて。ルーキーなのに懸賞金はもう億超え。剣士のゾロくんも億超えに仲間入り。流石海賊王を目指す男は違うわぁ。
ルフィくんももうすぐこの島に来るんでしょうね。新世界に行くためには一度ここ、シャボンディ諸島に来ないといけないもの。船が水圧に耐えられないから、この島でコーティングしないといけない。ふふ。早く来ないかしら?待ち遠しいわ。
でも今は私、他の人に用があってこの島に来たの。待ち人に会うのはその後。探し人にはすぐ会うことができた。だってとても目立つ人だもの。それに人探しはお手の物。
「ナマエか!久しぶりだなぁ!」 「レイリー副船長。お会いしたかったです!」 「わはは!久しく会わない内に美しくなったなァ!」
懐かしきかつての同胞。私の副船長。副船長のこの圧倒感。今も昔も格好いい。渋いわ。シャンクスと同じようなことでも、レイリー副船長の口から出ると効果が全く違う。惚れてしまいそうだわ。
「ここは偉大なる航路の中間だぞ。バギーはどうした?今は一緒の船に乗っているんだろう?」 「……バギーなんて大嫌いだわ」
私のこの言葉でレイリー副船長は全てを察したみたい。やっぱり流石ね。私のこと、何でもわかってる。私の眉はしおらしく下がった。パチン。近くでシャボン玉が割れた。飛び散る液を傘で防ぐ。
事情の説明をした方がいいのかしら…。でも上手く口が動かない。私、不安なのかしら?紅傘の柄に触れて、話す勇気をもらう。
「レイリー副船長。麦わらのルフィという海賊を知っているかしら?」 「最近巷で有名なルーキーか」 「ええ…シャンクスから麦わら帽子を譲り受けた勇敢な少年です」
バギーとは正反対の、海賊にしては真っ直ぐ過ぎる子だわ。私はルフィくんのことが好き。嫌になるくらい船長とそっくりだから。それにシャンクスとも。彼なら海賊王になれるかもしれない。その可能性を秘めている。
「私、あの子に賭けてみたいわ。…けど」 「バギーも海賊。敵に回ったわけか」
ええ、と副船長の言葉に頷く。困ったやんちゃ坊主だ、なんて言ってるけど、まさにその通りだわ。何でもかんでも自分の思い通りにいくって思い込んでるんだから。バギーの我儘っぷりにはもう付き合っていられない。今回ばかりは私だって簡単に折れてあげないわ。
「まあゆっくりしていくといい」レイリー副船長の言葉にまた頷いた。副船長の下だもの。少しは気が楽になるわ。
船長。私、本当はわかってるの。本当はその気になればバギーを説得することぐらいできる。何だかんだ言ってバギーは私の我儘を叶えてきてくれたもの。ただ……ただ私が素直になれてないだけ、って。
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