*小梅、呑む*

どこか船が売っていそうな大きな町か、もしくは観光船が出ている町に停泊してくれればそれでよかったのに。ミホークが船を着けたのは小さな無人島。誰も住んでいないのならそのどちらの用も済ませることができないじゃない。
うふふ。でもその思惑ならわかるかも。船上でカモメから貰った手配書の輝かしい笑顔を見て、私も笑顔になっちゃう。


「こんな島でキャンプとは…呑気な男だ」
「その呑気な男に会いに来たのはミホークだけどね」


うふふ。いやだわ、そんなに睨まないで。本当のことでしょう?

鷹の目が来た、ってことで怯える船員達の間を通り抜けて島の中央へ。探し人はそこにいるみたいだからね。ほらピッタリ。私もまだまだ現役ね。


「た、た、た、鷹の目…!…ヒィィッ!」


いやね。ミホークと一緒に来たからって私にまで怯えないで欲しいわ。これだから弱い男は嫌いなのよ。バギー以外、ね。


「よォ鷹の目。これァ珍客だ。俺は今気分が悪いんだが…勝負でもしに来たか?」
「フン。左腕を失った貴様と、今さら決着をつけようなどとは思わん」
「ナマエもいるのか。奇妙な組み合わせだなァ」
「ふふ。久しぶり」


シャンクス、今日も体調が悪いのね。本当バカな男。前会った時もこんな感じじゃなかったかしら?


「面白い海賊を見つけたのだが、ふとお前が昔していた話を思い出した。ある小さな村の、面白いガキの話を」
「見覚えのある麦わら帽子も見かけてね」


「こんな顔をしているの」とさっきまで私が眺めていた手配書をシャンクス達へと向けた。勿論、知っているでしょうね?幹部さんも。そんなに過剰な反応、って言うことはそれなりに付き合いがあったのね。

今しがたまで暗かったシャンクスの顔が一変、ルフィくんそっくりの明るい笑い顔になった。


「来たか…ルフィ!」


ルフィくんの賞金は3000万ベリー。破格よねぇ。まだ初頭の手配だってのに。きっと大物になるわ、あの海賊団は。うふふ。その日が楽しみ。楽しみにしてるのは私だけじゃないでしょうね。


「そうとなれば鷹の目…このまま帰すわけには、行かねぇ…」


シャンクスの目付き、変わった。

ドン!目の前に出された杯。なみなみに酒を注がれる。私と、ミホーク。二人分の杯ね。


「ぎゃっははは!そ〜か鷹の目!さぁ飲め飲め飲め!今日は宴会だ!」
「貴様二日酔いじゃ…」
「気にするな、祝い酒だ!!さァさァさァ!ぐーっと、ぐーっと、ホレぐ〜っと!!だっはっはっは!!気に入った!!飲むぞ飲むぞォ!!」
「かんぱ〜い!」


シャンクスの顔はもう真っ赤。いくらなんでも早すぎるわ。でも私、お酒は大好きだからじゃんじゃん飲むわ。さあもう一杯!祝い事には祝杯よ。こういう騒ぎ事は大好きだから、海賊を止められないのよね。


「オゥー!!けどお頭、さっきまであんた飲みすぎて気分悪いって言ってたじゃねぇか!」
「バッカ野郎!こんな楽しい日に飲まずにいられるかってんだ!!」
「まだ日は高いぞ」
「気にすんなって!!だっははは!パーッと行こうぜパーッと!!いい女もいることだしなァ!!」
「あら?セクハラ?もしそうなら私の傘が、火を噴くわよ?」
「だァ――!ナマエの傘は本当に火を噴くから勘弁してくれェ!それにセクハラじゃなくてほんとのことだしなァ!」


それならいいのだけど。ぐいっともう一杯。度数が足りないんじゃない?このお酒。こんなんじゃ酔えないわよ。ミホークももっと飲まなきゃ。宴会なんだから!


「ところでナマエ。バギーは元気か?」
「バギーならお星様になったわぁ」
「な、なにィ!?」
「今頃どこを放浪しているのかしらねぇ」


「なんだそういう意味か…」ってシャンクス?一体どういう意味合いで考えたのかしら?あの狡賢い小悪党が簡単に死ぬわけないじゃない。

そうねぇ。そろそろバギーのこと迎えに行ってあげないといけないかしら?あの赤っ鼻さんは私がついていないとダメダメなんだもの。会ったらまずは説教代わりに腹を裂かなきゃね。


「それじゃ、バギーがお星様になったことにかんぱ〜い!!」
「かんぱ〜い!!だぁっはっは!!」


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