痩せの大食い(1/3)


並盛中学に来て数日。学校生活にも慣れてきた、と思っていたのに休憩時間に少し席を外して教室に帰ると、教室はもぬけの殻。
次は理科の移動教室での授業だが、置いて行かれてしまったのか。どの教室を使うのか。とりあえず道具を持って学校の地図でも探して歩いてみようかと教室を出た。


「君、そこで何してるの?」


学校内をうろうろしていると、唐突に声をかけられた。背後を振り返ると切れ長の目をした男子生徒がいた。

並盛中学風紀委員長、雲雀恭弥。並盛の秩序と呼ばれているらしい。
この並盛において最強。私の要注意人物リストに登録されている。リボーン先生に次いで、私の素性がばれない様に注意しなければいけない人物だ。


「理科室に移動なんですけれど…場所がわからなくて……」


並盛中学には理科室が3つある。化学実験室、生物教室、物理教室のように用途が分かれているのだが、教室のネームプレートは理科室1、2、3と名前付けられているので、授業内容がわかっていても今日使う教室がどれかわからない。いっそこれを機会に名前を変えるべきだと思う。


「君は確かこの間来たばかりのイタリアからの留学生だね」
「あ、はい。そうです」


彼は全校生徒の顔を覚えているのだろうか。もしくは留学生の私が珍しいからだろうか。どちらにせよ私の障害にはならない。


「ついて来なよ」


そう言って彼は歩き出した。案内してくれるのだろうか、と小首を傾げていると「早く」と急かされた。


「並盛の風紀が乱されるのは気に食わないからね」
「そうですか。今行きます」


トトト、と小走りで風紀委員長の一歩後ろをついて歩いた。

チャイムが鳴った。遅刻になってしまったな。目の前の風紀委員長に怒られなければいいけど。現実逃避の意味も込めて窓の外の校庭を見た。


「…ん?」
「きょくげ――ん!!」


グラウンドでは体育の授業が行われているようだ。その中で一際目立つ短髪の男子生徒。「極限?」そう叫んだのだろうか?つい呟いてしまうと、不審に思った風紀委員長が私の視線を辿り、私と同様にグランドを見た。


「笹川了平…またか」


呆れを含んだ口調から察するに、こういうことは一度や二度ではないようだ。ボクシング部の主将、らしいがリーダーには不向きの性格みたいだ。

「後で咬み殺す」と物騒な台詞が聞こえたが、私は何も耳にしてないことにした。


「ここだよ」


ある一つの教室の前で風紀委員長は立ち止まった。第2理科室。中からは聞き覚えのある声が聞こえてくる。遅刻をしてしまったが、風紀委員長と会わなければこんなに早く辿り着かなかっただろう。


「ありがとうございました」
「教師に何か言われたら僕の名前を出すといいよ」


もう一度しっかりとお礼を言うと、風紀委員長は学ランの袖を翻して廊下の奥を突き進んで行った。

一匹狼を具現化したような彼だが、意外に親切なのだろうか、と彼が聞けばトンファーで殴り飛ばされてしまいそうなことを思いながら教室の扉を開けた。


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