沈黙は金、雄弁は銀(3/3)


「な、り、リボーン!?」


突然のことにすぐに対応出来なかった。こんなに近寄られるまで気配に気付けなかったなんて恥だ。

左手の塀の上。そこにスーツを着て黄色いおしゃぶりをぶら下げた赤ん坊がいた。黒のボルサリーノが妙に似合っている。


「よっ!小僧」
「こんにちは!リボーンさん!」
「リボーン!何しに来たんだよ!?今日は用事があるんだから、邪魔するなよ!」


沢田くんは赤ん坊に噛み付いたが、「黙ってろ、ダメツナ」と蹴飛ばされてしまった。獄寺くんは沢田くんに心配をかけているが、私の目は赤ん坊から動かない。


「ごめん稲葉さん、こいつは、ええっと…!」


沢田くんの心配を滲ませた言葉は私の耳を通り抜けていく。するりと鞄が手から離れ落ち、片手が口元へと動いた。


「り、リボーン先生…!」
「久しぶりだな、アル」
「…え、ええぇっ!?稲葉さんってリボーンの知り合い!?しかも先生って…!?」


何年ぶりの再会であろうか。「お久しぶりです」と声を震わせながら挨拶した。「美人になったな」との先生からのお世辞に照れながら否定の言葉を返す。


「せ、先生って…どういうことですかリボーンさん!」
「アルは俺の元教え子だからな」
「ええ――――っ!?」
「うるせぇぞ、このダメツナ」
「へぶぅ!」


また飛んでいった沢田くんは死にたがりなのだろうか。リボーン先生はスパルタだというのに。


「まさかお前が日本に来ているなんてな」
「それは私にも言えることです、リボーン先生」


それにしてもリボーン先生が沢田くんの家庭教師だとは思わなかった。なんという人を家庭教師につけているのだろうか、彼は。


「ちょ、ちょっと待ってよ!てことはまさか稲葉さんもマフィアってことじゃ …」
「…ハッ!そうだ!10代目の刺客ってんじゃあ…!」
「いや。アル、おまえ今何の仕事をしてるんだ?」
「今はとある屋敷でメイドとして働いています」


「なら関係ねぇな」とリボーン先生が言った。どこの屋敷に勤めているかは訊かれなかったので答えなくてもいいだろう。
Speech is silver,silence is gold.沈黙は金、雄弁は銀。訊かれるまでは答えない。いや、訊かれても答えない。答えてしまったら最後。動き辛くなる。


「…って、メイド――――!?」


私の職業に驚いた沢田くんはまた叫び、リボーン先生にハリセンで叩かれていた。


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