稼ぐに追いつく貧乏なし(1/4)


いよいよ明日はメローネ基地襲撃の日。日本に来てまだ5日。タイミングのいい時に来たのか、悪い時に来たのかわからないが、慌ただしい数日だった。

もしかしたら、明日過去に帰ることが出来るかもしれないということで食料を使い切るために今日はご馳走だ。
明日は決戦だと言うのに皆輝かしい笑顔をしている。命を懸けた戦いなのに、なぜ彼らはこんなに笑えるのだろうか。なぜ、戦えるのだろうか。誰かに感謝されるわけでもないし、報酬を受け取れるわけでもない。

隣に座っているボンゴレ10代目の明るい髪色を見て、ふと思った。いつも頼りなさそうに見えるのに、今の彼の瞳は揺らいでいない。


「ボンゴレ10代目。なぜ、貴方は戦うのです?」
「じ、10代目って…!…えっと、皆を守るため、かな?」


時々、彼らを見ていると何がなんだかわからなくなる。私の信条が音を立てて壊れていきそうだ。
絆、なんて不確かなもの、信じられるわけがないのに。それなのに、なぜ私はこんなにもぐらついているのだろう。


「私は貴方達と一緒に行くことは出来ない」
「えぇっ!?」


元々ボンゴレ10代目ファミリーの一員ではないのだし、馴れ合うなとスクアーロ様から言われている。それに『バアル』に依頼がある。明日の襲撃、彼らと別行動になるのは必然だ。――けれど


「けれど貴方を見ていると、大切な何かの正体がわかる気がする。ボンゴレ10代目」


いつか9代目が言っていた大切な何か。あのヴァリアーにいることで見つけられるだろう、と意味深に言っていた。

殺しの時とは違う緊張が私を襲って、喉がカラカラになった。誤魔化すためにオレンジジュースを飲み干す。「そ、そうだ!」チキンを食べようとしている時に、ボンゴレ10代目が声を上げた。


「仲間として戦うんだから、もっと気楽に呼んでくれても…って言うかオレ、まだ10代目じゃないし…」
「しかし…」
「前みたいに苗字がダメなら、オレ、ツナって呼ばれてるからそっちでも!」


私はボンゴレのボスである彼の下の暗殺部隊に所属しているのだから、おいそれと名前を呼んでいいわけがないのに。どうしても!という彼の目に圧倒されてハァ、と呆れて溜め息を吐いた。


「わかりました。降参です。沢田くんですね」
「(華麗にスルーされたぁあああ!!)」


なんだか心の叫びが聞こえた気がしたが、私は何も聞こえなかったことにした。


「私が沢田くんと呼ぶんですから、沢田くんもそれ相応の行動を取ってくださいね」
「えぇ!?それ相応って!?……えっと、じゃあ…アル」
「お?ツナ、何赤くなってんだ?」
「あ、赤くなんかなってないよ!アルも否定してよ!」
「ははっ!いつの間にか仲良くなってんのな!俺もアルって呼んでもいいか?」
「稲葉!テメェ10代目に何入れ込みやがった!」


こうして見ると彼らは本当にただの子供。これが未来のボンゴレファミリーのトップとなると思うと不思議だ。こんな子供が裏社会を牛耳ることになるだろうなんて。これが最後の晩餐とならないことを祈るばかりだ。


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