見るは法楽(2/2)


「ワォ。驚いた。7属性全て使える人間なんて、見たことないよ」


でしょうね。私自身、自分のことなのに驚いているのだし。幻術を解いた私の銃剣には今、雲と雨の2種類の炎が灯っている。雲雀さんのトンファーの炎を消したのは、雨の炎の鎮静の性質によるもの。


「最初の膨大な炎。あれは暴走させたものではなくて幻覚をかけたのを誤魔化すためにわざとしたものかい?」
「ご名答です」


あの一瞬の間にリングを指にはめ、銃剣の先の剣に鎮静作用を持った雨の炎を灯し。仕上げに幻覚でそれらを肉眼で見ることが出来ないように幻術で隠した。小細工のような幻術は私の得意分野。


「す、すっげー…稲葉のやつ、やっぱり強いのな」
「稲葉さん…まだ未来に来て数日なのに…!」
「あの順応性と万能性の高さが、アルの強みだぞ」


リボーン先生がニヒルに笑った。先生に教えを請うた頃、褒められる時に何度も言われた言葉だ。聞こえはいいが、つまりは器用貧乏。けれどそれを強みに変えろと先生に教えられて以来、私がいつも頭に置いていることだ。

雲雀さんはトンファーに炎を灯し直して、私を見据えながら笑った。


「噛み殺し甲斐がありそうだ」
「それが出来るなら、どうぞ」


私の言葉に雲雀さんは眉を寄せた。足を進めようとさせた彼の動きが妙だ。見れば足に白い縄が絡みついている。


「へ、ヘビ――!?」
「白蛇(セルペント ビアンコ)。私の可愛いアニマル匣です」


紫色の炎を灯しているヘビは何匹にも分裂し、雲雀さんに足元から彼の体を拘束していく。蛇は狩りをする際、そのしなやかな体からは考えられないくらいの強い力で獲物を締め上げる。たとえ雲雀さんと言えど、そう簡単にその拘束を解くことは出来ない。

後はトドメを刺せばお終い。私の勝ち。けれど私は匣を翳して白蛇を匣の中に戻した。


「この程度で貴方を止められるだなんて思ってませんからね」


雲雀さんの手の中には匣がある。あのまま白蛇を出したままでいると、匣兵器を使われて、逆に私が再起不能までに滅多打ちにされてしまっていただろう。

手合いの目的、戦闘スタイルの模索は達成された。なんとか形になってきた、というところだろうがまあいい。


「お相手、ありがとうございました」
「…ふぅん。まあいいよ。次の機会を待つだけさ」


そう言ってトンファーを収めた雲雀さんは行ってしまった。…私、寿命を縮めてしまったのかも。


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