見るは法楽(1/2)


ボンゴレアジトには雲雀さんのアジトへと続く専用の通路がある。そこを通り抜けたら別世界、とまでは言わないが、雰囲気がガラリと変わって日本邸風のアジトが広がる。「雲雀さん、お願いがあるのですが」そう言って草壁さんに案内された部屋の襖を開けた。


「何の用」
「手合わせの相手を務めていただきたく、お願いに参りました」


私の知っているアジト付近にいる人の中で、雲雀さんが最も匣兵器の扱い方、この時代の戦い方に長けている。「いいよ」不敵に笑った雲雀さんが了承の返事を返した。あ、やっぱり相手を間違えたかも。


動きやすい服装に着替え、トレーニングルームへと向かった。するとそこには相手をしてくれる雲雀さん以外に、ボンゴレ10代目達が集合していた。


「皆さんお揃いで…どうかしたんですか?」
「リボーンが休憩するついでに集まれって言って…」
「こいつらのいい刺激になると思ってな」


私の修業が彼らに刺激を与えられるなんてあまり思っていないけれど…観客がいるだけ、とでも思っておこう。ポケットから雲属性のヴァリアーリングを取り出し、その場で右手の指にはめた。「雲のリング」と誰かが呟いたのが聞こえた。


「参ります」


リングに炎を灯した。けれど勢いをつけすぎてただ大きいだけの炎となる。勢いがある炎が視界を紫に染め上げる。死ぬ気の炎の源は生命エネルギー。多く放出させることは逆に命取りとなる。


「あんなんじゃ雲雀は倒せねえぜ。何やってんだ、あいつは」
「稲葉さん、きっとまだ死ぬ気の炎の調整が出来ていないんだよ!」


炎を丁度いい大きさまで凝縮させて、銃剣に纏わせる。やっと準備が完了した、と身構えようとした瞬間、トンファーを構えた雲雀さんが走ってきた。彼のスピードは速い。後ろに下がりながら銃を何発か撃つ。


「ただ銃を撃つだけじゃ、僕には勝てないよ」
「そんなものは百も承知です」


弾の数が空中で増えた。「分裂した!?」と沢田くんが驚いたが、まさにその通り。紫の炎を纏った大量の弾丸を、雲雀さんは避けずにはいかない。


「雲の炎の性質、『増殖』を上手い具合に使ったな」


リボーン先生の指摘の通りだ。これは炎の性質そのものを使った戦い方。けど同じ雲属性を持つ雲雀さんが相手。当たる前にこの手段を読まれていては当たりなどしない。


「すげぇ……稲葉さん、オレ達と同じくらいのレベルって言ってたのに。オレには真似出来ないよ」
「アルとツナの戦闘センスを同じに考えるんじゃねえ」
「うっ…!そんなのオレだって百も承知だよ…!」


事実だから余計傷付くんだよ…めげたツナはアルと同じ台詞を吐いた。

銃はダメ。ならばもう一つの手段、剣の方を使うまで。先に何発か撃って自分の間合いを取り、一気に斬りかかった。容易にトンファーで受け止められてしまい、攻め続けられる。


「銃がダメなら真っ向からってことかい?けど、僕にそんな手は」


彼の攻めの動きが止まった。自分のトンファーに目が釘付けになっている。「何があったの」とボンゴレ10代目の口から言葉が漏れた時、トンファーに纏われていた炎が消えていった。


「幻術…」
「流石雲雀さん。こんなにも早く見破られるだなんて思ってもみませんでした」
「え!?何!?何が起こったの!?」
「あんにゃろ…手品でも使ったのか…?」
「私だけ貴方の手の内を知っているだなんて、卑怯な気がするので教えて差し上げます」


距離を取り、私がかけた幻覚を全て解くと、私の両手には合計7つのリングが現れた。リングが7色の炎で輝く。


「私の扱える属性は、7属性全て」


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