同情するなら金をくれ(1/3)


デスヒーター。燃えるような痛みは体を動かすことを許してはくれない。傍で伏せている風紀委員長が目に入った。


「……ああ、痛い」


頬を流れる汗を拭って、何とか立ち上がった。解毒方法はリングの装填、だったか。リングのあるポールの高さは校舎の3階に相当する。この程度の高さなら何とか、と勢いをつけてポールを駆け上がった。リングをリストバンドに差し込み、解毒薬が注入された。一度に息が軽くなる。

何回か深呼吸をして、地面に降り立った。風紀委員長がどうにかして立とうと苦戦している目の前に立つ。


「なんで君、立ててるの…」
「毒にはある程度の耐性がありますから」


そう言って風紀委員長のリストバンドにリングを差し込んだ。これで彼も解毒されたことだろう。


「何、してるの」
「貴方には校舎を案内してもらった借りがありますから。それに、同じ雲の守護者同士仲良くしましょう?なんて」
「…嫌、だねッ」


振り回されたトンファーを避けて、数歩の距離を取った。後半の言葉は冗談と嫌がらせの意味を込めて言っただけなのに。それともそれをわかった上で攻撃されたのか。

リングを指で弾いて風紀委員長に渡した。


「リングの回収は依頼されていませんから。それ、差し上げます」


なので見逃してください、そう言った。いくら毒に耐性があるとは言え、体力を大分削られた。ここで彼を相手にするのは無謀にも程がある。


ポールの上にまた上り、腰を掛けた。各所の様子はリストバンドのカメラで知ることが出来る。何かすることがあれば、その時呼び掛けに応じればいいだろう。

けれどグラウンドから聞こえてくる爆音を聞きながら、やはり他の守護者のところを回ってみるか、と思いポールから下りた。


まずは本校舎3階。ベル様と獄寺くんがいるかな、と思ったが二人ともいなかった。あれおかしいな、と窓の外に目を向けるとベル様と風紀委員長が争っていた。そういうことか。ならここはもう用済みだな、と思い次は屋上に向かった。

けれど屋上にも誰もいなかった。爆撃の跡があることから、獄寺くんがレヴィ様と争ったのだろう。レヴィ様が気を失っているが、解毒はされているようなので私にすることはないようだ。

次はどこに。ここからならB棟が近いだろう。あ、そう言えばスクアーロ様はいなかったのだ。……まあ良しとしよう。山本くんが死にそうなら貸しを作るというのもいいだろうし。けれどB棟にも誰もいなかった。


…私は誰かとかくれんぼでもしているのだろうか。もう追うのは止めにしよう。無駄なことをしている気がする。なんだってこんな金にならない働きをしなくてはいけないんだ。

グラウンドに戻ろうか。…いや、グラウンドに行けばザンザス様達の巻き添えを食らいそうだ。ゆっくり、のんびり戻るとしよう。持っている銃の弾丸数を確かめて、歩き出した。


<<< >>>

back




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -