バアル・ゼブル(4/4)


「あの嬢ちゃんが『バアル』だって!?」


リボーン先生の言葉に突如シャマルさんが声を上げた。何事かと幾人かの視線がシャマルさんに集まる。対する彼は冷や汗を流していた。


「バアルって言やぁ…一時期名を馳せた凄腕の殺し屋だぞ…」


幼いヒットマンだと噂で聞いてはいたが、まさかあの嬢ちゃんだったとは…リボーンの弟子だったなら納得だ、とシャマルさんが言う。その驚きようから実力は確かなのだと沢田くん達は判断したようだ。


「降参、しますか?」
「くっ…!……こ、降参だ」


悔しいけれど、もうなす術はない。反抗すれば銃を撃たれるか、喉笛を突かれてお終いだろう。勝敗に疑問の余地はなかった。


「嘘でしょ…?稲葉さん、こんなに強いの…!?」


驚愕するばかりの面々が、まさに沢田くんの疑問に同意の念を抱いた。「また腕を上げたな」と言ったリボーン先生に目礼をした。


「沢田綱吉のサポーターが降参したことにより、サポーター戦の勝者は稲葉アルとします」
「大空戦での要求は何になさいますか、ザンザス様」
「決まっている。そこのカスを雲の守護者として大空戦に参戦させろ」


スカートについた僅かな埃を払っている間に、いつの間にか話をつけられていた。本人に確認を取ってからそういうことは言って欲しいのですが。そういう意味を込めてザンザス様の顔を見たが、「文句あんのか」と目が語っていたので諦めて口を噤んだ。クソ、ふてぶてしい御曹司め。向けられた銃が怖いので口には出さなかったが。
先程の戦いを見てレヴィ様も反対は出来なかったのだろう。今度は大人しくザンザス様の考えを受け入れた。


「それでは続けて、大空戦を行います」


勝利条件はサポーター戦を除いた全ての戦い同様、リングを完成させること。フィールドは学校全体。広大なフィールドのため、各所にカメラとディスプレイを設置されている。
さらにカメラ搭載型のリストバンドの装着を義務付けられ、守護者戦が行われた場所に移動した。私は途中交代とは言え、雲の守護者として参加しているのでグラウンドだ。


開始はいつだろう。そう思った瞬間、リストバンドから何か手首に刺さった。それと同時に体に激痛が走る。痛みのあまりに膝を地面に着いた。同じ場にいる風紀委員長も地に伏す。

モニターからチェルベッロの説明が聞こえてきた。リストバンドに内蔵された毒を注入したのだと。デスヒーターという名の猛毒。身が燃えるような痛みが走る。走る。解毒しなければ、たった30分で絶命してしまう。
解毒方法は各場所に設置されたポールの上に置かれたリングをリストバンドに装填すること。守護者全員の命も懸ける、とはこういうことだったのだろう。


中庭から建物が崩壊する音がした。大空戦、開戦したのだろう。それともザンザス様が先に手を出したのか。

とにかく最後の戦い、開幕だ。


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