金が敵(1/4)


嵐の守護者戦、勝者はベル様であった。雷の守護者戦にて沢田くんが乱入したことにより、大空のリングはザンザス様の手の中。三勝一敗。つまりヴァリアーが優先している。

今夜は雨の守護者戦。スクアーロ様の出番だ。いよいよ残りの組順の数が僅かとなった。

そんな中で沢田くんの霧の守護者はまだ判明していない。ヴァリアーも、沢田くん達も知らない。霧の守護者らしく謎に包まれている。


並盛の隣町、黒曜。隣町だというのに、並盛の穏やかな雰囲気とはうって変わって危険な香りのする町だ。黒曜には黒曜ヘルシーランドという、沢田くんと復讐者の牢獄から脱獄した六道骸が戦った廃墟がある。

沢田くんと関わり合いを持ったことのある術士は、今のところ六道骸ただ一人だけだ。唯一霧の守護者として挙げられるとしたら彼だけ。けれど彼は復讐者の牢獄に再び監獄され、この町にはいない。せめて何か手がかりでもあれば。そう思って黒曜ランドに出向いた。


誰かが出入りしている形跡は見つけた。誰か住んでいるのだろうか、と屋外から双眼鏡で覗いた。そして見つけた一人の少女。双眼鏡から目を離し、準備してきた資料に目を移した。


「……似ている」


六道骸の面影を見ることが出来る。外面的にも…内面的にも。成る程霧の守護者は彼女である可能性が出てきた。

守護者が判明しただけでも十分だ。とりあえず撤退するとしよう。



そしてその日の夜、夢を見た。夢にしては意識がはっきりとしている。精神世界。自覚が持てれば自由に体を動かせる。ふむ、と体の調子を確かめた。至って好調。


「クフフフ。こうしてアルと会うのはいつぶりですかね」


霧のように私の前に一人の青年が姿を現した。昼間写真で、そして以前に見た顔だ。「六道骸」そう名前を呟くと、彼は「クフフ」と笑った。


「一年くらいになりますかね。君は宣言通りマフィアの静粛をしていたようで」


おかげで今は牢獄ですが、と肩を竦めて彼は笑った。
こうして彼と再会するのは本当に久しぶりである。こんな形で合い見えるとは思いもしなかった。


「そういうアルは今はマフィア関係者ですか。よもや彼らに味わされた屈辱を忘れたのですか?」
「まさか」


ならばなぜ、と骸くんは続けるつもりだったのだろう。けれどそこで私の性質を思い出したようだ。「また金ですか…」正しいことを言ったが、言葉には呆れが混じっていた。
彼のマフィア嫌いも健全らしい。理由が判明すると、私の勘違いかもしれないけれど、心なしかほっとしているように見えた。


「君の方こそマフィア嫌いの癖にそのマフィアに加担するつもりなのに?沢田くんの霧の守護者は君なのでしょう?」
「クハハ!痴れ事を。確かに僕は守護者ですが、それもいずれ沢田綱吉の寝首をかくため。君風に言うなら、メリットがあっただけです」


彼がそう主張するならば私はそう受け取るしかない。納得を意味する頷きを一つした。メリットがなければ願い下げ、なんてところか。全く本当に彼らしい。

片やボンゴレ最強の暗殺部隊のボスの使用人、片やつい先日まで普通の学生の血統者の部下。なんとも奇怪。気質が真反対のボスを持つと、互いに様々な場面で苦労しそうなものだ。


「君から見て沢田綱吉のことをどう思いますか?」
「甘すぎる子供ですね」
「では、あのザンザスに呆気なく負けると思いますか?」
「さあ?」
「おや?金の縁からの主人を疑うなんて君らしくない」


そんなことはない。私はただ自分の見解を述べただけだ。金の縁まで疑ったわけではない。ただ、この勝負は案外予想外の方向に転がりそうだと思っただけ。私は所詮雇われの身であるのだから、もしこの勝負でザンザス様が敗北者となっても、あそこから逃げ出して新しい道を進めばいいだけ。今までと何ら変わりない。
「中々に薄情ですね」骸くんはそう言うけれど、君も幾分私と大差はないと思う。第一、裏社会に身を置いている以上裏切りからは逃れられない。私は少しも間違ったことを言ってはいない。

さて、折角の再会なのにこんな冷たい話なんて合わない。何か話題転換しよう、と骸くんの顔を見ながら思うと、昼間見た少女のことを思い出した。


「黒曜ランドのあの少女。君に少し似ていましたけれど」
「クロームのことですか?クロームは少々特異体質でしてね」


何でもその体質故に骸くんが憑依弾無しに憑依出来るのだとか。成る程、明日の守護者戦はあの少女を使うのか。念のため私は彼女に危害を加える気がないことを伝えておいた。金が関わるなら私の意向が変わるかもしれないが、そんなこと骸くんはとっくにわかっているだろう。

「明日の勝負、頑張ってくださいね」敵であるのに励ましの言葉を贈ってしまった。これは流石に踏み込みすぎかと思い返したが、旧知の仲ということで問題はないと上書きした。骸くんはまた口元に笑みを浮かべていた。


「クフフ。それではその明日に控えて今日はもうお暇しますが、またお会いしましょう」
「さようなら」


出来ることならもう会いたくない、とは口にしなかった。危ない危ない。明日はデザートにパイナップルでも用意するか。


明け方、スクアーロ様の姿はなかった。マーモン様に訊ねたところ、「やつは死んだよ」それだけ言われた。


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