然うは問屋が卸さない(1/2)


日本滞在期間ももうすぐ二週間に達する。任務を続行しつつ、学生生活を満喫している私に、ある一報が届いた。


「カス鮫が日本に飛ぶ」
「……はい?」


一応今現在、一番権力が強い主人が電話口でそう言った。
カス鮫というのは恐らくスクアーロ様のこと。ああ、面白いニックネームをつけられてしまったのだな、とスクアーロ様のことが少し哀れに思った。

ザンザス様の知らせを要約すると、だ。スクアーロ様が来日されるが、特に気にせず任務を続けろとのこと。流石にそれだけでは伝わりません。


そんなわけなので、さらに力を入れて沢田くんの見張りをするとしよう。
今日は授業はなく、補習のみなので朝から双眼鏡を手に行動を見張った。朝から沢田家の食事は豪勢であった。まさかのいきなりの収穫だ。今日の朝のニュースの占いは見れてない。もしかして1位だったのかも。

今朝は大収穫の模様。どうにも沢田家の大黒柱、沢田家光が並盛に来るらしい。あの、ボンゴレ門外顧問が次期ボス候補のいる場所に来る。そしてスクアーロ様も来る。何か騒動が起こったのだろうか。まさかザンザス様が。帰ったら早急に調べ事をしなければ、と思った。


「あんなダメな親父…」と落ち込む沢田くんを励ますために山本くんによる提案で、彼らは並盛商店街へと遊びに出かけた。人数が多すぎる気がしないでもないが、特に問題はない。後を追いかけ、陰に隠れるやら建物の上に姿を隠しながら尾行する。至って普通だ。何の異常もない。いっそ何も起こらなければいいのに。


そう思った瞬間、爆音。


こんなありふれた風景に似合わない効果音だ。沢田くんから目を離さないよう注意しながら音の発生源を探る。ショッピングモールの2階部分から煙。戦闘でも起こっているのか。次の瞬間には沢田くんの体の上に一人の少年が落下した。


「う゛ぉ゛おい!!」


先程した爆音のような叫び声。思わず体がピクリと反応してしまった。


「なんだぁ?外野がぞろぞろとぉ。邪魔するカスはたたっ斬るぞ」


ザンザス様の知らせがなければ気が動転していたことだろう。にしても急だ。急すぎる。そして目立つ。
スクアーロ様が目立っているおかげで私の気配はさらに周囲に紛れる。これは好都合。でもやっぱりスクアーロ様は目立ち過ぎる。何度だって言ってみせる。目立つ。

沢田くんの体の上に落下し、スクアーロ様が追っている少年の額には青い死ぬ気の炎が灯っている。スクアーロ様の言動から察するに、あの少年はボンゴレ関係者なのだろうか。


標的を少年から沢田くんにすり替えたスクアーロ様の怒涛の攻撃から沢田くんを守るため、山本くんと獄寺くんがスクアーロ様に立ち向かうが、相手が悪い。片や凄腕の暗殺者、片や中学生。死ぬ気の炎を灯している少年はまだやれる方だと評価するが、やはりヴァリアー実力2のスクアーロ様に勝てるわけがない。

少年の炎も消えた。沢田くん大ピンチ。そう思った瞬間リボーン先生が沢田くんに向かって銃をぶっ放した。


「リ・ボーン!!」


下着以外の服を破り、起き上がった沢田くん。


「うわ、卑猥…」


おっと。ついつい口が…

少年とは違った、荒々しい炎を灯す彼もまた、スクアーロ様には敵わない。炎が消えた彼は逃げ出したが、それをスクアーロ様の仕込み火薬が追う。次期ボンゴレボス候補、沢田綱吉、死す。なんて不謹慎なことを思っていると、瓦礫が火薬を防いだ。スクアーロ様が舌打ちしたのが見えた。

瓦礫に隠れて知らない少年が沢田くんに向かって小箱を差し出した。中に何か入っている?もう少し倍率を上げてみるとしよう。中身は何かな、と思っていると目を見開いたのがわかった。


――ボンゴレリング


こうなることを見越してザンザス様は私に任務を言い渡したのか。そう言えばザンザス様に何か行動を起こしているかと訊ねた時に不敵に笑っていたな。
ザンザス様はまた波乱を起こす気か。あれが動くとはそういうことだ。

双眼鏡を握り締める手に、力がこもった。


<<< >>>

back




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -