▼損して得取れ(1/3)
骸くん達と別れたのはいいものの、これからどうやって生きていこうと思案していた頃だ。施設に誰かが団体でやって来た。
何をしに来たのか、と問えばここで実験をされていた子供達を救いに来たのだと彼らは言った。正義のヒーローか、と問えば世界最強のマフィアだと答えられた。なんでだ。最近のマフィアは慈善活動もしているのだろうか。 ちょっとだけ詳しく話を伺うと、彼らはエストラーネオファミリーの静粛に来たらしい。マフィアは他のファミリーを倒して勢力を拡大していくのか。マフィアの実態がよくわかった。
私がその彼らの保護対象というわけで、話を聞くために別室に通された。他の子供達は話を聞けるような状態でないらしい。それほどまでに酷い状態なのか。
「ありがとう。つらいことを思い出させてしまったね」 「……いいえ」
でもこの状況はおかしいと思う。なんでマフィアの中でも勢力最大のボンゴレ、そのボスに事情聴取される羽目になるのか。うーむ。握らされたお札は嬉しいし、その疑問は無視しておくか。
ボンゴレファミリーのボスは穏和な老人であった。私を一目で金好きと判断したその観察眼、侮れない。
「君のような小さな子供が可哀想に…」 「はあ…」 「そうだ!私には君よりも年上だが息子がいるんだよ!」
丁度外にいるみたいだ、と9代目は窓の外を見ながら言った。手招きをされたものだから従わないわけにもいかず、トコトコと歩いて彼の傍へ行った。
窓の下、一人の男の人。私と一回りも離れていないとは思う。9代目とはあまり似ていないような。
振り向きざまに見た、あの人の射抜くような赤い瞳を、私はまだ覚えている。
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