色気より食い気(1/2)


この時代のボンゴレファミリーを壊滅に追いやったファミリー、ミルフィオーレはボンゴレ直属の暗殺部隊、ヴァリアーをも勿論攻撃し、今ヴァリアー本邸には人が少ない。
元々ヴァリアーは少数精鋭ではあったのだが、弱い者から戦力を削られていったため、今この屋敷には使用人がいない。何時ぞやと同じ状況であるのは気のせいであろうか。

とは言ってもこの仕事にはもう慣れているから、そこまで苦労することではないのだけれど。


「いーい!?とにかく、大抵アルちゃんさえいればボスのご機嫌をとることが出来るの。だからぜーったい!アルちゃんはボスから離れちゃダメよ!わかった!?」


苦労するのはむしろこちら。ルッスーリア様並びに幹部の皆様の剣幕に押し切られるまま、うんうんと何度も頷いてしまった。一体私はこの10年の間に何をしてしまったのだろうか。

ともかく、そういうわけで私の主な活動範囲はトレーニングルーム、厨房、そしてザンザス様の執務室。活動内容は掃除、または調理。またはグラスにお酒を注ぐこと。私、認めたくはないが一応幹部の一人なのにこんなことしかしなくていいのだろうか?これで高給だから文句があるわけではないのだが。
こっそりそこらへんを歩いている平隊員の方にお話を伺ったところ、10代目の遣いとして笹川さんがこの屋敷にいらっしゃるらしい。もてなす必要はないのか?とルッスーリア様に尋ねたところ、逆に何もしないで!と力説された。お客人なのにもてなしたくないって…どれだけヴァリアーは10代目ファミリーが嫌いなのか。そして本当に何もしなくていいのか。


「おい、アル」
「はい、何かご用でしょうか?」


掃除の手を止め、ザンザス様の方へ向き直る。ザンザス様はグラスを傾けながら手招きをするものだから、何事かと眉を寄せながら傍へ近付く。私をお呼びなさった彼はポケットの中から何やら小箱を差し出した。ザンザス様の奇怪な行動に私は首を傾げるばかり。


「こちらが、どうかなさいましたか?」
「テメェからの預かりもんだ」


「私からの…?」と疑問符を浮かばせ続けながら、いつまでもザンザス様に預けておくわけにはいかないので受け取っておく。ザンザス様に預け物をするなんて、私、随分と身の程知らずなことをしたようで。今さらな気がしないこともない。

グラスの中のワインが残り少なくなったようなので、注ぎ足しておく。さて、この小箱、未来の私の物でないのだからどうしよう。


「無くすんじゃねェぞ」
「……はあ」


手に余らすと困るし、命令されて丁度良かったのかも。無くさないように肌身離さず持っておくことにしよう。ポケットにその小箱を突っ込みながらそう思った。


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