色気より食い気(2/2)


ザンザス様から渡された小箱の中身、未来の私は何を入れていたのだろう、と確かめるとそこにはシンプルな指輪が鎮座していた。皆様が談話室で寛いでいる間に確かめたものだから、この小箱を手に入れた経緯を話すとレヴィ様が絶叫を上げていらした。

シンプルな作りの指輪はセンスが良く、未来の私が選んだものとはどうにも思えない。そもそも自分で買った物をあのザンザス様に預けたりするだろうか?誰かからの贈り物という線が濃い模様。用意したおやつのケーキを口に運びながら正体不明の指輪の推理をした。


「にしてもあのクソボスが、なあ…」
「スクアーロ様、何かご存じなのですか?」
「……まあ、なぁ」


謎の深い指輪。ふーむ、やっぱりどちらにしても手に余る代物のよう。戦闘で役に立つものならいいのだけど。


「この指輪、炎が出るわけじゃありませんよね?」
「ったりめぇだろうが」
「ですよねぇ…」
「ボスが…ボスが……ボスぅうぅううううっ!!」
「っるせぇ!!」


レヴィ様、スクアーロ様の蹴りがモロに入って悶絶しているようだが、大丈夫なのだろうか?きっと大丈夫。大丈夫ということにしよう。むしろ何も聞かなかった、見なかったことにする。


「もう。アルちゃんってば鈍すぎよぉ!あ、そういえば私物の確認は全部済んだかしら?」
「私の部屋にある物なら粗方」


鈍いってのには何も追究しないでおくとする。

私物については、未来の私に宛がわれた私室にある物の確認は終わらせた。持っている匣兵器も全て開匣して仕組みを理解済み。
そして私の膝の上には今、部屋にあった小型のPCがある。情報収集はヒットマンとして最低限の仕事だ。今の私がヒットマンなのか、メイドなのか、はたまた両方なのかよくわからないけれど。


「皆様お暇ならミルフィオーレの情報について何かお教え願いたいのですけれど」
「暇じゃねーよ」


飛んできたナイフをフォークを使って跳ね返す。そのフォークは狙ったつもりはないのだが、フラン様(後輩なので様付けする必要はないとベル様に言われたが、結局付けることにした)の被り物の眉間にグサリ。「ゲロッ」呻き声がしたが死んではいないようだ。


「そこのペーペー二人。教えてやれ」
「オレもうペーペーじゃねぇし。おいクソガエル」
「なんでミーが……」


ぶつくさと文句を垂れたが、先輩に要求されたら断り切ることはしないのか、最後には折れて説明してくださった。

ミルフィオーレはジェッソとジッリョネロが合併して出来たファミリーである。その内部はいくつかの部隊に分かれ、中でもトップランクの6名は『6弔花』と呼ばれている。


「日本を任されてる6弔花はこの眼鏡とキザ男ですねー」
「……あれ?この人…」


フラン様から渡された写真に映っている男の一人をまじまじと見る。さっきPCのデータの中で見た男のような……。

ここで余談になるのだが、私はかつて自分で暗号を作った経験がある。以前私が解析した暗号を利用して作り上げた暗号文。私以外に見せた覚えはないので、すなわち私専用の暗号ということだ。その暗号で書かれた文書データが、このPCの中に入っていた。わざわざそんな暗号を使ったということは、他人には知られたくない情報ということ。

じっと写真の中の男の顔を見つめる。それに、彼には未来に飛ばされる直前にぶつかりそうになった少年の面影がある。この場で口にしては混乱を招くだろうことは予想出来たので発言はしなかったが、彼が深くかかわっているだろうことはよくわかった。彼は日本支部を任されていると先程フラン様が仰っていられた。


「……私、日本に飛んでもいいですか?」
「!?だ、ダメだ!絶対に許可しねぇ!!」
「…ししっ。ボス、機嫌最悪になるんじゃね?」
「オレとしてはとっとと追い出したいところだがな」
「レヴィ!止めてちょうだい!ボスの機嫌を取るのにどれ程苦労すると思ってるの!?」


困った。どうしよう。写真をずっと眺める私に「…考え直すのをオススメしますー」というフラン様の間延びした声が耳に入った。


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