出雲の神より恵比寿の紙(3/5)


翌日、ヴァリアーの皆様が並盛にやって来た。早い。早すぎる。準備は程々にしか終わっていない。完璧に用意出来なかったので私の心は苛立っている。それに加えてベル様とマーモン様は並盛中に潜入するなんて……。どんな自由人だ。さらに苛立つ。

日本にいらしたら日本食を。そういうわけで今日はお刺身だ。ザンザス様は肉がいい、と我儘を言ったが今日は良い肉が用意出来なかったのだ。肉は明日用意します、とその場で黙らせた。
よくあのザンザスを黙らせた!と心の中で賞賛する者が多いが、一人、黙ってはいない者がいた。


「貴様!いつもそうやってザンザス様に楯突きおって!」
「チッ……タコは黙ってろっつーの」
「今回はベルに賛成だぁ…」
「元々俺はおまえのことを幹部として認めていないのだ。たとえよ、妖艶であってもだな…!」


ベキリ。今の音はどこからだ、と幹部達がアルの手の中を見た。箸がへし折れている。「あのアルが目に見えて苛立ちを露わにするなんて…!」と不安が心の底から一気に湧き上がってきた。アルは「ああ、ついつい」と代えの箸を用意する。笑顔でいるのが猶更恐ろしい。


「アル」
「今度は何です、むぐ」


その場にいる、アルとザンザスの二人以外の目が見開かれた。あの、ザンザスがアルの口の中に自分の取り分の刺身を突っ込んだのだ。もう一度言う。あの、ザンザスが、だ。


「ちったあ落ち着いたか」
「…このお刺身、美味しいですね」


今度自分用に買い貯めておきますか、と口をモグモグと動かしながら呟いた。


「ざ、ザンザス様ぁああぁあああ!?!?」


テメェは退出しろ、と幹部たちに引き摺られてレヴィが部屋から追い出されたのは二人は知らないことだ。


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