口と財布は締めるが得(3/5)


「では本日よりこちらでお世話になります」


両手を前で合わせて深くお辞儀をした。スクアーロ様に連絡を取れたので、改めて挨拶を、とだ。


「アルもタイムトリップしているとはな」
「クロームさんがいましたので、もしやと思いましたがまさか皆さんもとは」


リボーン先生の言う通り、私の目の前にいるボンゴレ10代目ファミリーは過去の、つまり私と同じ時代の彼らである。何者かの意図を感じるのは私の気のせいなのか。
ちなみにクロームさんは度重なる疲弊のため、意識が戻らないので医務室にて療養中だ。


「10代目!コイツは敵です!やっぱり追い出しましょう!!」
「ご、獄寺くん!今は仲間割れしている場合じゃ!」


獄寺くんの言う通り、私は世話になるだけで味方なわけではないのですがね。ボンゴレ10代目の言うことは少し誤解を招きそうだ。


「でもよ獄寺。稲葉は強いんだから戦力になると思うぜ?」
「うぐっ!」
「そうだよ!稲葉さんが力になってくれるなら」
「残念ながらこの中で私が一番足手纏いになるでしょうね」


ボンゴレ10代目の言葉を遮るように私は言った。「え」と彼らは固まったが、リボーン先生は当然のように頷いた。


「わかんねぇのか。アルはこの時代の戦い方を知らねぇんだぞ」
「自分のことをよくわかっているようだな。とは言え、状況はお前らとなんら変わらん」


アルコバレーノのなりそこない、ラル・ミルチが言った。鋭い目付きで私のことを上から下まで観察している。ラル・ミルチはかつて軍の教官であったのだとか。その名残だろう。

ところで、10代目達もこの時代の戦いに慣れているわけではないらしい。こんな面子で無事過去に戻れるのか、不安で堪らない。


「何にせよ、私に期待はしないでください」


そんなぁ…とボンゴレ10代目がわかりやすいくらい項垂れた。そもそも自分の命を狙っているかもしれない相手に手を借りようとするなど、やはり甘ったれているなと思う。私は一応暗殺部隊に所属しているのに。


「なら僕が鍛えてあげよう」
「群れるのはお嫌いなんでしょう?風紀委員長」
「雲の守護者同士、仲良くしようと言ったのは君じゃないか」
「都合の良いことばかり覚えているんですね」


すっと顔をずらすと、先程まで私の顔があった位置にトンファーが突き刺さった。「やっぱり稲葉さんって命知らず…」ボンゴレ10代目が呟いた。失敬な。


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