口と財布は締めるが得(2/5)


日本支部のボンゴレアジトの専属チューナー、ジャンニーニさんにお借りした通信機により、イタリアのヴァリアー邸へと連絡を取った。保護回路のため、ジャックの心配はないそうだ。


「う゛ぉ゛おい!!やっと来たかぁ!!」


バン!マイクに向けて一発撃った。空砲なので機械に傷が入ることはない。この人は一度自分の声が凶器ということを知るべきだ。


「な、何しやがんだテメェ…!!」
「うるさい。誰の口座を空にするって言った」
「……れ、連絡を取らせるための言葉の綾ってやつだぁ…」


「ならいいんです」穏やかな口調で言い返した。向こうからホッと安堵する雰囲気が伝わってきたが、言及はしないでおこう。


「それで、私に何のご用でしょうか?」
「首脳会議で5日後に全国のミルフィオーレ基地に対して、総襲撃をすることになった」
「それで、私にも参加しろ、とのことでしょうか?」


「そういうことだぁ」との返事。

現在ミルフィオーレは敵対するマフィアを尽く潰しているらしい。ボンゴレもその一つ。ミルフィオーレを殲滅することが、私達が生き残るただ一つの方法。


「ご用件は理解したのですが…」
「何だァ!!」


だから叫ぶな。声がうるさい、という意味合いを込めてまた空砲を一発撃った。「鼓膜が破れんだろ!」という言葉に「それは私の台詞です」と返した。口座を0にする、という脅しはまだ根に持っている。


「私、ただ今『バアル』として依頼を受け持っていまして」
「だとぅ!?」
「その5日後のメローネ基地の潜入は沢田くんと全ての行動を共にすることは無理だと思うのですが」
「いや、むしろ」


通信機の向こうでガラスの割れるような音と、スクアーロ様特有の「う゛ぉ゛おおい!」という叫びがした。何が起こったのか、通信機の前でぱちくりと瞬きをする。


「テメェの好きにしやがれ」
「っ、ザンザス様がいらしていたのですか。失礼いたしました」
「指輪は無くしてねェだろうな」
「勿論でございます」


ザンザス様が気に掛けるこの指輪、もし無くしてしまったらどうなるのだろう。本当に気を付けないと、とポケットの上からその存在を確かめた。


「……死んだらかっ消す」
「いいかぁ!!絶対にボンゴレと馴れ合うんじゃねぇぞぉ!!」


死んだ人はかっ消せませんよ、と言い返す間もなく通信は切れてしまった。にしてもスクアーロ様は最後まで喧しかったな、と眉を寄せた。


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