▼行き掛けの駄賃(3/4)
攻撃はクロームさんの有幻覚に任せ、私達は一歩引いて防御に徹する。
「行ったよ、クローム!」
千種くんの警告通り、雨巨大イカの11本ある足のうちの1本が向かってきた。
先程のような、軌道を逸らすだけでは駄目だ。次に匣兵器を持った相手と戦う時に、何の対処も取れないまま死んでしまいかねない。なんとしても死ぬ気の炎を使う戦術を会得しなければ。
炎を灯すことに必要なのは、覚悟。何かをやり遂げようとする、意志。
「今の私がすることは、クロームさんを守ること」
ボッ、と銃剣の剣の部分とリングに紫の炎が灯った。炎と炎のぶつかり合いでイカの足が真っ二つになる。切れ味は最高。これは使えそうだ。
「何だと!?」とグロ・キシニアが驚きで声を上げる。その間にクロームさんが幻覚に紛れさせた実物でダメージを与えた。よい策略だ。現にグロ・キシニアは翻弄されている。
幻覚、有幻覚。幻覚に潜む有幻覚。有幻覚から生まれる幻覚。真実の中に潜む嘘。嘘の中に潜む真実。
「これが霧」
骸くんの言う霧のあり方に、成る程と私は頷いた。何だかんだ言って、彼は霧の守護者としての使命を全うしているようだ。
「おぉぉのォ――れ――ェ!!」
最後の最後に敗者としてひれ伏したのは、グロ・キシニアであった。私の指には紫の炎が明々と輝いていた。
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