行き掛けの駄賃(3/4)


攻撃はクロームさんの有幻覚に任せ、私達は一歩引いて防御に徹する。


「行ったよ、クローム!」


千種くんの警告通り、雨巨大イカの11本ある足のうちの1本が向かってきた。

先程のような、軌道を逸らすだけでは駄目だ。次に匣兵器を持った相手と戦う時に、何の対処も取れないまま死んでしまいかねない。なんとしても死ぬ気の炎を使う戦術を会得しなければ。

炎を灯すことに必要なのは、覚悟。何かをやり遂げようとする、意志。


「今の私がすることは、クロームさんを守ること」


ボッ、と銃剣の剣の部分とリングに紫の炎が灯った。炎と炎のぶつかり合いでイカの足が真っ二つになる。切れ味は最高。これは使えそうだ。

「何だと!?」とグロ・キシニアが驚きで声を上げる。その間にクロームさんが幻覚に紛れさせた実物でダメージを与えた。よい策略だ。現にグロ・キシニアは翻弄されている。


幻覚、有幻覚。幻覚に潜む有幻覚。有幻覚から生まれる幻覚。真実の中に潜む嘘。嘘の中に潜む真実。


「これが霧」


骸くんの言う霧のあり方に、成る程と私は頷いた。何だかんだ言って、彼は霧の守護者としての使命を全うしているようだ。


「おぉぉのォ――れ――ェ!!」


最後の最後に敗者としてひれ伏したのは、グロ・キシニアであった。私の指には紫の炎が明々と輝いていた。


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