行き掛けの駄賃(4/4)


グロ・キシニアとの勝負は勝利に終わった。一時の安息は手に入れたものの、リングの反応を感知して次の敵襲が来るだろう。早いうちにこの場を退散しなければ。


「クロームさん、早くここを離れましょう。…クロームさん?」


気力を失ったクロームさんがその場に倒れた。ただでさえボンゴレ基地の場所がわからないというのに、彼女を負ぶって探して歩くなど危険極まりない。

視界の隅でグロ・キシニアが動いた。まだ生きている。トドメを刺すか。いや、そんなことよりここから逃げることが先決だ。敵の機動力の高さを私は知らない。動けぬよう顎の骨を念入りに、体中の骨を折っておいた。……これならトドメを刺した方が早かったのかもしれない。


クロームさんの鞄、ムクロウを彼女の胸の上に乗せて、膝裏に腕を通した。……念のため、入口を破壊して行くか。残った手榴弾を入口に残してその場を発った。


次はどこに逃げるべきか。ここが黒曜なら、並盛はすぐそこなのだろう。足場の悪い通路でこけない様に気を付けながら走って建物を出た。


「無事だったか」
「誰!?」


バックステップで距離を取った。声は前方から。周囲を警戒してどこに敵がいるか、探ろうと試みる。こちらには気を失ったクロームさんがいる。分が悪い。


「安心しろ。俺は味方だ」
「貴方は…笹川、さん?」


黒曜ランドの傍にある林から姿を現したのは、リング争奪戦の際にルッスーリア様の相手をしていた「極限」が口癖の笹川さんであった。けれど私が知っている笹川さんでないような気がする。首を傾げた私に「ははは!」と笹川さんは豪快に笑った。


「俺はおまえ達で言う未来の笹川了平だ」
「ああ、通りで」


とにかく安心だ。敵ではないどころか、味方が現れるとは。気を失った人を庇いながらの戦闘は厳しいところがあったから。


「クロームは気絶しているのか」
「はい。グロ・キシニアとの戦闘で気力を使い果たしたようで…」
「そうか……大変だっただろう。一先ずボンゴレアジトに向かおう」


アジトの場所は笹川さんが知っているようだ。助かった。このままどうしようかとあぐねいていたところだ。「アジトまでクロームは俺が運ぼう」と私と交代してくれたり、足元に気を付けるようにと気遣ってくれるあたり、笹川さんは10年の間ですっかり大人にと変わったようだ。


「極限にアジトまで急ぐぞ――!!」


前言撤回。やはり笹川さんは笹川さんであった。


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