足りない人数
体が揺れる感覚にサスケは目を覚ました。自分の冷えた体に誰かの体温が伝わってくることから、誰かに背負われているのだとわかった。
「……カカシか…」
カカシはサスケが目覚めたことに気が付くと、首を回して目を向ける。
「ナルセは…?」
「……」
返ってきた答えは沈黙。連れ戻せなかったのだと、すぐに理解できた。悔しくて、爪を立てて自分の手を強く握りしめる。
「カカシさん!」
医療班が駆け寄って来た。
「うちはサスケの容態は?」
「大丈夫だ」
カカシは命に別状はないと続けた。
「ナルセは…うずまきナルセはどこですか?」
一人の隊員が声を荒げてカカシに尋ねる。カカシは静かに首を振った。答えなど、考える必要などなくわかる。サスケは目を伏せ、隊員達は口を閉じた。
「他の下忍達の状況は?」
「はい。火影様の命により第一、第二医療班が出動。すでに負傷者を各地で回収、緊急治療を施した後、護送しました」
「状態は?」
「はい。奈良シカマルは軽傷。犬塚キバは傷が深いですが、命に別状はありません。日向ネジ、秋道チョウジの二名は重体。今のところ予測がつきません」
淡々と告げられるナルセ奪還に奮闘したメンバーの容態。これだけ傷ついたにも関わらずナルセは帰って来なかった。
仲間達の怪我を危惧しつつ、サスケは再び意識を落とした。
*****
里に帰還後、サスケは治療を受けてベッドに押し込まれていた。
シカマルが見舞いに訪ね、小隊のメンバーの容体を告げる。代わりにサスケはナルセは連れ帰れなかったことを伝えた。その後すぐにサクラと綱手がやって来たことで話を聞かれていたことを理解する。
「すまない…サクラ」
伏せ目がちに言ったサスケに、サクラは一瞬顔を歪ませた。しかしすぐに心配をかけさせまいと笑顔になる。
今日はいい天気だから、とサクラがカーテンを開けた。こちら側からは彼女の表情を見ることができない。もう一度サスケが小さな声で謝罪した。
「いいのよサスケくん。気にしないで」
サクラの言葉を咎めようとしたシカマルの声をサスケの声が遮る。
「ちくしょう…畜生畜生畜生!全部…オレが弱かったせいだ…」
「サスケくんのせいじゃない!私が…ナルセを守れるくらい強く、なかったから…」
二人共声が震えていた。気にしていないわけがない。サクラの視線がサスケの手元にあるナルセの額当てに行く。
「サクラ…ナルセがオレ達に最後に残した言葉を、覚えているか?」
「…うん!強くなれ。そして」
「大切な人を守れ」
結局、あれがナルセの最後の教えとなった。きっとわかっていてこの言葉を残して行ったのだと二人は信じた。まだ希望はある。
「絶対に…強くなってみせる!」
「私だって…サスケくんには負けないんだから!」
固める決意
(最後に示された道を)
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