星の瞬き | ナノ

  赤い瞳、鮫、暁@


里を出てオレと自来也は歩き続ける。

なんというかさ…文明が発達しているのかしていないのかはっきりしないよね。冷蔵庫や水道は設備されてるっていうのに、パソコンや車はない。そりゃあ忍術でカバーできるところはしたほうがいいと思うよ?エコだもん。


でもさ、こう遠出をする時に車がないというのは中々に不便だ。へいタクシー!ができないんだぜ?

歩き続けるというのも疲れるし、科学をもっと発達させたほうが知能が高い人間にはもっと住みやすい世界になると思うんだ。…うん、きっと頭はいいのに天然なお馬鹿さんが多いんだね


「ところで変質者さん、オレもただでひょこひょこ着いて行くわけではないですよ」


自来也じゃ!と叱咤して変質者は顎に手を当て考え始める。


「そうじゃの…新しい術をお前に授けよう」

「……ああ」

「反応がうっすいのーっ!」


甘いものでなければ価値なんてないのさ、フッ…

なんてかっこつけてる間に宿場町に到着。


「ナルセ、今日はここに泊まるぞ」


宿はわりと普通、というか質素なところ。本当は高級ホテルを要求してやりたいところだが。まあ妥協してやろうかと一人うんうん頷いていると通りがかった美人さんと目が合った。色っぽい、という言葉はこういうお姉さんにぴったりなのであろうな。

艶やかな唇に目を奪われているとパチンとウインクを飛ばされた。ドストライクですお姉さん!


「ナルセ!先に部屋に行ってチャクラ練って修行してろ!のォ!」


お姉さんの色香にまんまと引っかかった自来也。感服します、お姉さん。

なんてことを考えてる間に無理矢理鍵を押しつけられ、返事をする間もなく変質者はお姉さんにホイホイ着いて行く。ちょ、オレもお姉さんについていきたいのに…げふん。


「…性病には気を付けろよー」


何だかんだ言って性病は怖いからな。HIVの主な感染経路も性的接触だ。…ま、あの変態はとっとと逝くほうが世のためだと思うがな。


*****


変質者はひとまず置いておいて部屋に向かうことにした。あのエロジジイと同室というのには気に食わないが、宿代は変質者持ちなので我慢しておこう。

部屋の内装は、ビジネスホテルを想像してもらえばいいかな?うん、狭い。このオレを連れ回すのだからスイートぐらい用意しろってんだ


荷物をベッドの上に放り投げて言い付け通り修行を始める。座禅を組んでひたすらにチャクラを練る。

このチャクラ、再利用できないであろうか?ただ練るだけというのももったいない。何か術とかに利用できればいいのに…。あれ?確かそんな術を使ってる人がいたような?


ひたすらにチャクラを練り続けていれば、コンコンと控えめなノック音が響いた。自来也ってこんな丁寧な態度をとる奴だったか?それとも単に訪問者であろうか


「はいはーい、今開けます」


鳴り止まぬノック音に返事をして扉のチェーンを外す。ドアを開ければ背の高い男の二人組がいた。黒のコートに赤い雲。なんともまあ風変わりで目立つものを着ているものだ

片方の男は鮫に似た風貌をして背中に大きな刀を担いでおり、もう片方は烏のような黒髪に赤い瞳。


「なんだイタチか、久しぶりだな。何か用か?」

「リーダーから報酬を受け取って来いと言われてな」


おっと忘れていた。久しぶりの再会の喜びに浸っている場合ではない。

兄さんにはこの間の木ノ葉崩しの件で風影保護の依頼をしていた。波の国の任務の前の作戦はそのことについて。報酬は依頼成功後に渡すと決めていた。


「じゃこれ。報酬代わりの兄さんの薬」


部屋に戻り鞄の中にたまたま入っていた紙袋をほいと渡す。ふと視線を感じたのでそちらに顔を向ければ鮫さんが。


「これが噂のリーダーの妹さんですか。顔を合わせるのは初めてですが……意外ですね」

「その口のなかにフカヒレ突っ込むぞ、コノ鮫ヤロウ」


嫌いなものなので遠慮しますと鮫さんは首を振る。意外ってなんだ意外って。なめた口ききやがって…


で?用事は済んだんだから早く帰ればいいのに。立ち止まったまま動かない。というよりオレの頭を撫でくり回し続ける。サソリのがうつったのか?おい

イタチは大きな溜め息を一つ落とす。なにこれ。尋ねてくれって言いたいの?


「…イタチくんイタチくん。一体どうしたのかな?」

「…はぁ。折角木ノ葉下りまで来たというのに。サスケに会えなかった…」


ここでまさかのブラコン発動かよ!こりゃ重症ですね!どなたか病院を呼んでください。いやむしろ病院が来い。


「うちは…イタチ……ッ!」


唐突にした慣れ親しんだ声がする方に顔を向けると、呆然と立ち尽くしたサスケがいた。ここまで走って来たのか肩が激しく上下している。

サスケの頭の中ではなぜここに、ナルセに会いに来たのかといった疑問が渦巻いている。カカシを訪ねると、その彼はベッドにいて、さらにはあのイタチが里に来たと聞いてみればこれだ。


「久しぶりだな、サスケ」


さっといつものすかしたイタチに戻る。まさか話題に出したばかりの弟が会いに来るとは思わなかったのか、若干声に感情が含まれている。

しかしどうしたものか。イタチは自分を恨むように差し向けたはずであるのに、一向に襲ってきそうにないサスケに疑問を抱いている。


「あ、伝え忘れてたがな。サスケはオレに弟子入りしたんだ」

「……そういうことか」


納得したように呟きサスケを見定める。もう何年も会っていなかった唯一無二の弟。その瞳の奥には何が隠れているのであろうか。

……いや待てよ。何か嫌な予感がするのは気のせいであろうか


「……ちょっと待て。なんでサスケがここに来たんだ?」

「カカシが、イタチにやられたと聞いて来た…」


ばっとイタチを顧みる。イタチは気まずそうに目を逸らしてそっぽを向く。


「…何したんだ」

「団子を食べている最中、上忍達に追われた…」


どうやらこいつの団子好きは治っていないようだと呆れて額に手を当てる。


「目的とかはどう答えたんだ」

「四代目の宝に会いに来たと…」

ぜってー勘違いしてるじゃねえかよ!


間違ってない間違ってないよ!?でもさ、言い方とかあるじゃない?未だに暁は犯罪組織という濡れ衣が晴れてないんだからさ!長門兄さんの邪魔をするなよな!


「でなんでサスケはこんなに焦ってるんだよ」

「仕方なく月読を…」

「仕方なくじゃねえよぉおおお!!!」


がくがくと肩を掴み揺さぶる。鮫は隣で呆れたようにイタチを見る。お前もどうせなんかしたんだろ?あ?そうなんだろぉぉおおお!!


「お前弟と縁切らせるぞ?サスケは家で養ってるんだからな!?養子に入れるぞ、え!?」


そんな馬鹿な!とイタチは目を見開いてサスケを見る。サスケはというとどうやら状況を全く理解できていないようで目をきょろきょろと泳がしている。

確かにサスケの籍は家に属していないが、家できちんと養わせて頂いている。つまり立派に波風家の一員ということだ。

それをイタチに説明すれば愕然としていた。おいこのブラコン!


「イタチ…いや、兄さん。オレはあの日の真実を知りたい」


両目を写輪眼にしてサスケは真剣な表情をして尋ねる。

兄、と聞いて鮫は関心していた。この少年がイタチさんの弟さんですかと。イタチは仕方ないとでも言うように溜め息を吐いた。


サスケは波の国から帰った後、独自にあの事件のことについて調べ回っていた。しかし、全くと言っていいほど情報が出てこなかったのだ。オレも手伝ったからこそわかるが、あれは確かに意図的に情報を隠蔽されていた。

イタチはサスケの真剣な目に根負けして長く瞬きをする。



「…許せサスケ。また今度だ」



イタチは泣きそうな目をして万華鏡写輪眼をサスケに向けた。




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